30日朝、ボルソナロ前大統領は89日ぶりに滞在先の米国からブラジルに帰国した。事前に想像されたより落ち着いた帰国となったが、今後、多くの裁判など苦しい状況が待ち受けていると、30日付フォーリャ紙サイト(1)などが報じている。
ボルソナロ氏は昨年12月29日、ルーラ政権が誕生する2日前にブラジルを発ち、フロリダ州オーランドで過ごしていた。公用ビザは1月いっぱいで切れていたが、その後は観光ビザに切り替えて滞在していた。
オーランドの空港からゴル航空の飛行機で帰国の途についたボルソナロ氏は、30日朝6時38分にブラジリア空港に降り立った。空港の規制が厳しく、出迎えた人たちは数百人だったが、待ち受けた人たちは国家などを歌い、熱狂的に迎えようとした。だが、ボルソナロ氏は通常の待ち受け口とは別の出口から空港を出た。
ボルソナロ氏は到着後、大統領府安全保障室による厳重な警備の中、ブラジリアにある自由党(PL)本部に出向き、同党のイベントに参加した。これはボルソナロ氏が帰国後に最初にしたいと語っていたもので、非公開で行われた。
ボルソナロ氏はこのイベントで、連邦議会で最多議員数を誇るPLの現状を褒め、「彼ら(ルーラ政権)の思い通りにはならないはずだ」と語っている。
ボルソナロ氏は29日にオーランドの空港で受けたCNNブラジルのインタビューで、「どの野党勢力も率いるつもりはない。私は経験豊富な政治家として自分の党に参加するのみで、協力してくれと願われたことをする」と語っている。同氏はPLの名誉党首を務める予定で、月に1~2度全国を回るつもりだとも語った。
ただ、ボルソナロ氏を取り巻く環境は容易ではない。選挙高裁では、昨年の大統領選での選挙法違反での訴えが16件に及んでいる上、1月8日の三権中枢施設襲撃事件での関係性を問われる可能性も指摘されている。
とりわけ、連邦警察では1月から逮捕、勾留が続いているアンデルソン・トーレス前法相が証言を行う予定とされており、選挙結果を無効にしようとした疑惑の条例などが自身と関連付けられると立場が苦しくなる。
また、4月5日は、任期中にサウジアラビア政府からの「プレゼント」として違法な形で受け取った宝石などの3組の贈呈品にまつわる嫌疑に関し、連邦警察で事情聴取を受けることになっている。
ボルソナロ氏に関して現地メディアで最も言及されているのは、「逮捕まではされないだろうが、26年の出馬はできなくなるだろう」との見方だ。
トランプ元米国大統領の参謀で、米国極右の大物のスティーヴ・バノン氏は、「裁判では極右勢力が弱くなるどころか、一層強化される」とし、ボルソナロ氏の後継者として三男エドゥアルド下議に期待したいとの発言を行っている。