世界有数の人気者ドレイク、ブラジルで嫌われ者に

ドレイク(Instagram)

 2023年のサンパウロ市は、国際音楽フェスティバルが5本も開かれる異例の状況となっている。ブラジルが世界のコンサート市場で大人気なのを裏付ける証拠だ。その一方で、ブラジルでもっとも嫌われることが決定的になったスターがいる。ドレイクだ。
 カナダはトロント出身のドレイクは、ラッパーでありながら優れた歌手でもあり、2010年代以降、世界で最も売れたアーティストのひとりだ。強面の多いヒップホップ界の中で、女性に優しい紳士的なイメージを持ち、俳優もやっていた甘いルックスも手伝って、世界で広く愛された。2016年以降は、新作アルバムを出すたびに、その収録曲で全米シングルチャートを独占するほどの人気を誇っている。
 そんな世界に愛されるドレイクがブラジルでは嫌われ者になっている。ことの発端は2019年に出演したロック・イン・リオ。ここで彼は、それまでトリの出演者が誰一人断ってきたことのなかった同フェスティバルのテレビ生中継を当日になって拒否。ホテルやリハーサルで傲慢な言動を行い、ブラジルの食事に対する差別発言暴露報道でイメージを大きくダウンさせた。
 そんな逆境にあるドレイクを、この3月にサンパウロ市で行われたロラパルーザ・ブラジルは、大トリに選んだ。発表時点で音楽ファンからは「キャンセルするのではないか」と不安の声が上がっていた。
 悪い予感は的中した。彼はロラパルーザ・ブラジルの1週間前に行われたチリ、アルゼンチン版ロラパルーザで、開始を20分遅らせて登場。本来90分のライブを50分未満で終わらせ、顰蹙を買った。
 そして3月26日のロラパルーザ・ブラジルで、当日の朝にキャンセルを発表。その理由を「コンサート・スタッフがいなくなった」せいにした。
 だが真実は違った。彼は23日のコロンビアでのフェスティバル出演後、サンパウロ市に向かわず米国へ行き、26日未明にはマイアミのクラブで遊んでいた。キャンセル理由の現地コンサート・スタッフは、いなかったどころか、現地で既に大掛かりなドレイクのステージ・セットを組み終わらせていた。
 ブラジルは観客が熱狂的なことで多くのアーティストから愛され、有望な市場としても注目を集めている。ところが報道によると、ドレイクにはこのブラジルファンの熱意が「押し付けがましい」と感じるそうだ。他のアーティストからはそのような話は聞かないが、いずれにせよ、今回の騒動の代償は小さくなさそうだ。(陽)

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