「いいぞ、盛り上がってきたぜ!もっと盛り上がろうぜ!!」。2日目、非日系の若者らによる日本語の叫び声で始まったダイナミックな太鼓の演奏は、県連ふるさと巡り一行を感動の渦に巻き込んだ。2018年に創立したばかりの日本文化地域協会「サクラ」(以下、サクラ協会)の主に非日系人によって構成された日本舞踊団「愛歌(あいか)」の情熱溢れる演奏だった。ブラジル日本都道府県人会連合会(県連)主催の団体ツアー「第53回移民のふるさと巡り」の参加者一行78人は3月16日から20日にかけて、南大河州5都市を訪問。現地の歴史を学ぶと共に日系団体と交流した。
南大河州の日本人移民は1956年、23人の戦後移民によって始まった。移住当初に設立された日系団体のうち、時代の移り変わりによって活動停止を余儀なくされていったものもあったが、その一方で、新しく誕生する団体もある。そうした歴史の変遷を感じることもふるさと巡り日系団体交流の醍醐味だ。
参加者一行はサンパウロから飛行機で南大河州サントアンジェロ市へ向かい、そこから85kmほど離れたイジュイ市へバスで向かった。同市には27民族の文化が受け継がれており、2022年には国際連合教育科学文化機関ユネスコから世界民族都市の称号が与えられた。
同市の日本人は80年代半ば、他民族に負けじと団体設立を試みたが、居住者数の少なさから実現は叶わなかった。それから約30年が経ち、その思いを引き継いだ子孫らが中心になって、日本文化好きのブラジル人と一緒にサクラ協会を設立した。
ふるさと巡り一行はイジュイ民族連合(UETI)施設で、現地民族団体らによる芸能披露の盛大な歓迎を受けた。中でも、日本舞踊団「愛歌」約10人による熱意溢れる太鼓と踊りの披露は、一行の心に強い感動を呼び起こした。
「愛歌」は北海道民謡ソーラン節や山梨県民謡武田節、沖縄民謡など幅広い演目を披露。踊る様子からは「芯から日本文化が好き」という想いが伝わってきた。舞傘や舞扇子などを用いた華麗な踊りも披露された。
アフリカ系やアラブ系、スペイン系、ガウーショ(南大河州出身者の愛称)系の民族芸能も披露された。ガウーショらはアコーディオンで日本の曲を5曲演奏し、そのうちの一曲は「ふるさと」だった。アコーディオンで奏でられる馴染みある音色に誘われ、一行は思わず大合唱。異文化融合と呼べる瞬間だった。
UETI施設から現地日本人会との交流会場へ移動する最中、ふるさと巡り団長の谷口ジョゼ県連副会長に感想を尋ねると「サンパウロでは日系の血筋だからという理由で嫌々活動に参加している若い人たちもいる。だけどここの子たちはすごかった。血縁で生じるものより強い日本文化への愛を感じた」と話した。また、「日系」という概念を改めて問いかけるため、自身で撮影した映像を県連役員らに発表するつもりだと語った。
バスの中では愛歌を褒め称える言葉が絶えず、「(感動で)もう(心が)満腹になっちゃったから、帰って寝ちゃってもいいかもね」との冗談と笑い声が聞かれた。
今回のふるさと巡りでは、南大河州サントアンジェロ市、サンミゲル・ダス・ミッソエス市、イジュイ市、サンタマリア市、州都ポルト・アレグレとイボチ市を訪問し、現地の歴史を学ぶと共に日系団体と交流を行う。(続く、仲村渠アンドレ記者)