新高校課程、ルーラ政権が差し止めへ=導入わずか2年目にして=教育者や生徒の反発受け

カミロ・サンターナ教育相(Wilsonn Dias/Agencia Brasil)
カミロ・サンターナ教育相(Wilsonn Dias/Agencia Brasil)

 ルーラ政権は3日、2022年に導入された高校課程の改革(新高校課程)を差し止めることを決めた。併せて、2024年からの国家高等試験教(ENEM)の改革も行わないと発表した。教育現場からの強い反対に応えたものだった。3日付フォーリャ紙サイト(1)などが報じている。
 新高校課程に関しては、テメル政権の2017年に連邦議会に改正法案がかけられ、可決、承認された。
 その新課程では、授業の60%が「基礎課程」、残りの40%が「選択制」とされ、自然科学、人文科学、数学、言語、職業教育の5分野から生徒たちが選択できるようになっている。
 新課程は2022年の新1年生から適用されていたが、教育現場から強い反対の声があがり、教育者たちの間で新課程の導入をやめるよう呼びかける運動が活発化していた。
 その背景には、生徒たちから「必要な教育がしっかり受けられないのでは」という不安の声が上がっていたことや、実際の高校の教育現場でも教員の数や学校のインフラが不足しており、選択させる以前に授業が実施できない科目があり、生徒の側が自由に選べないなどの実態が存在していたという。3月初旬には教育省や各自治体の教育局の前で生徒たちが新課程に反対するデモも起きていた。
 そうした声に押される形で、今回はこの新課程を差し止めることになった。3日に報じられた内容によると、この差し止めは新課程を完全に差し止めるものではなく、既に実施している高校の生徒には影響がないものにするというが、「義務」とされていた新課程への移行を義務ではなくするという。
 差し止め期間中は3カ月かけ、同件に関する現場や国民の声を集めるための公聴会などを開催する。また、その後の30日間は、教育省内で今後の方針などについて再検討する期間としている。場合によっては差し止め期間延長もありうる。
 22年の1年生は23年に2年生の課程に入り、24年で新課程を修了する予定だったが、今年の新課程適用は(少なくとも当面)無効化されるため、2024年の新高校課程への移行を完結する生徒に合わせて改定する予定だったENEMの改革も中止となった。
 4日朝、ルーラ大統領はカミロ・サンターナ教育相と共にこの件についての話し合いを行っている。後日、この会議の結果を基に、差し止め後の改革案や新課程の適用の在り方などが文書化されるものとみられている。
 今回の差し止めは、かねてから差し止めを求めていた教育関係者には歓迎されている。だが、その一方で、長年大統領候補と目されているテレビ司会者のルシアノ・フッキは、「新高校課程はイデオロギーとは関係なく道入されるべきで、導入で苦労してもやめるべきではない」と批判。全国教育局長審議会(Consed)も「やめてしまうのではなく、新しいやり方に対応すべきだ」との見解を出している。
 CBN4日朝のニュースで専門家は「教育は〝飛んでいる巨大飛行機〟と一緒。故障しても止めるわけには行かない。現場が混乱しないよう、改革は慎重かつ計画的に進めるべき」とコメントしていた。

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