最高裁のリカルド・レヴァンドウスキー判事が予定を1カ月ほど前倒し、11日に退職した。これにより、ルーラ大統領(労働者党・PT)による後任判事選出や最高裁や選挙高裁での今後の裁判がどうなるかなどの問題が生じてきている。12日付フォーリャ紙(1)などが報じている。
レヴァンドウスキー判事の本来の定年退職日は75歳の誕生日を迎える5月11日だったが、同判事はその日を待たずに退職した。レヴァンドウスキー氏はルーラ第1政権の2006年に最高裁判事に就任。2014年9月からは2年間、最高裁長官も務めている。
今回のレヴァンドウスキー判事退任によって、ルーラ大統領が次に誰を後任として指名するかに注目が集まっているが、ルーラ氏はすぐに指名する構えを見せていない。
その背景には、ルーラ氏が希望する自身の担当弁護士のクリスチアーノ・ザニン氏の指名に対し、「大統領との関係が近すぎて公正さを欠く」との理由で反発の声が強いことがある。とりわけ、最高裁判事の口頭試問(サバチーナ)を行う上院は現在、ボルソナロ前大統領が所属する自由党(PL)の上議が多く、ラヴァ・ジャット作戦の裁判でルーラ氏に1審で有罪判決を与えたセルジオ・モロ上議(ウニオン)もいる。ザニン氏はその裁判の際の担当弁護士でもあり、後にモロ氏を「ルーラ氏の裁判で偏りがあった」と訴え、最高裁がそれを認める判決を下したという因縁もある。
こうしたことから、後任指名は先延ばしになりそうだが、フォーリャ紙によると、連邦議会の議員たちがルーラ氏に対し、「人事をまとめて行う」ことを提案しているという。それは、ローザ・ウェベル最高裁長官が10月に定年するまで待ってまとめて最高裁判事2人、さらに連邦検察庁長官の後任、高等裁判所(STJ)の判事3人を同時に指名するというものだ。
最高裁判事選出のための期限はなく、この方法をとることに問題はない。だがその間、判事数が偶数になるために判決投票の際に引き分けになる可能性があり、望ましくないとされる。また、最高裁でもジウマール・メンデス判事は嫌っているという。
最高裁判事の候補としてはレヴァンドウスキー氏が推薦するマノエル・カルロス氏がいる。だが、ルーラ氏は最高裁の事務局長も務めたマノエル氏は「経歴がジアス・トフォリ判事に似ている」として渋っているという。
また、レヴァンドウスキー氏退任により、同氏が判事を兼任していた選挙高裁で行う、昨年の大統領選での選挙法違反でのボルソナロ前大統領に対する裁判がどうなるかにも影響が出てきそうだ。それは、同裁での後任判事がボルソナロ氏の指名で最高裁判事になったカシオ・ヌーネス氏となるためだ。レヴァンドウスキー氏はルーラ氏に、カシオ氏はボルソナロ氏に寛大な判断を下すことで知られており、判事としての傾向が真反対にある。