アラブ首長国連邦を訪れたルーラ大統領(労働者党・PT)は16日、ウクライナ紛争に関し、以前から主張している「戦争責任はウクライナとロシアの双方にある」との持論を再度語り、物議を醸している。16日付フォーリャ紙(1)などが報じている。
今回の発言は、ルーラ大統領がアラブ首長国連邦のメディアからのインタビューで飛び出したものだ。大統領はそこで、「戦争をやめることよりも始めることの方が簡単だ。なぜなら、今回の戦争はウクライナとロシアの両国がはじめたものなのだから」と語った。
ルーラ氏はウクライナ紛争に関して、昨年の紛争勃発時も、「両国が始めた」という見解を表明。ウクライナから「親ロシア派か」と思われたこともあった。外務省はルーラ氏が米国のバイデン大統領と会談する直前の今年2月、「ロシアによるウクライナ侵攻を非難する」との声明を出したが、ルーラ政権は3月、バイデン大統領が提唱した民主主義の国際憲章に調印するのを拒んでいた。
ルーラ氏は続けて、「私は現在、平和的な解決を求めて動いている。中国では習近平国家主席、ここアラブでもムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領など、平和を望む人に会ったが、会談は成功だったと思う」「だが、ロシアもウクライナも戦争を止めるために動く気配がなく、米国や欧州は戦争をけしかけるばかりだ」と戦争継続を批判。「今こそ、同じテーブルについて話し合うことが必要だ。フランスのマクロン大統領が習国家主席と会って会談したことはとても喜ばしいこと。平和について話し始めることはとても大事なことだ」と語っている。
ルーラ氏は具体的な解決策として「G20のような主要国の会議による平和解決グループ」の存在をあげているが、「現状では先進国の間にはそのような兆しは全くない」と語っている。ボルソナロ前大統領は、ルーラ氏の「米国が戦争をけしかけた」との発言を批判している。
また、ウクライナのゼレンスキー大統領はルーラ大統領の提案した平和解決案に対し、「クリミアを手放すわけにはいかない」として、否定的な見解をすでに示している。
また、ルーラ大統領は今回のアブダビ訪問で、燃料に関する協定を結んだ。注目されるのはバイオ・ディーゼルと航空燃料のためのケロシン精製工場建設に関して、向こう10年間で120億レアルの投資を、同首長国連邦が行うことだ。建設予定地はバイア州で、帯同していた同州のジェロニモ・ロドリゲス知事(PT)が調印に応じている。
アラブ首長国連邦と伯国の間では気候問題に関する協約も交わされており、気候変動問題の国際会議で伯国側の交渉役も務めた元インド大使で、現政権で発足した外務省気候環境局長のアンドレ・コレア・ド・ラゴ氏が調印を行っている。