ブラジルを代表する思想家20人を紹介=『ブラジルの社会思想―人間性と共生の知を求めて』

『ブラジルの社会思想―人間性と共生の知を求めて』

 『ブラジルの社会思想―人間性と共生の知を求めて』(小池洋一、子安昭子、田村梨花編)が昨年12月31日、現代企画室から出版された。
 同書では、ブラジルの代表的思想家20人を紹介。『ブラジルのルーツ』でブラジル人のアイデンティティを浮き彫りにした社会学者セルジオ・ブアルキ・デ・オランダを始め、ブラジルが低開発国から脱せない構造的理由を解き明かしたセルソ・フルタード、経済格差是正を志した政治家の一人としてルーラ大統領も取り上げる。
 文化人からはブラジル文学史上最大の文豪と評されるジョアキン・マリア・マシャード・デ・アシスらに加え、ブラジルに俳諧を普及した増田恆河の思想も辿る。
 編者の小池氏は立命館大学経済学部教授を経て、同大学BKC社系研究機構客員研究員を務める人物。開発研究、ラテンアメリカ地域研究を専門に『社会自由主義国家―ブラジルの「第三の道」』(新評論、2014)などを著書に持つ。子安氏と田村氏は共に上智大学外国語学部教授を務め、子安氏はブラジル現代政治・外交研究、田村氏はブラジル地域研究・社会学を専門としている。
 各編執筆担当は京都大国語大学名誉教授の住田育法氏や、元上智大学教授の三田千代子氏らが務めた。
 コラム欄では日本ブラジル中央協会常務理事の岸和田仁氏や写真家の渋谷敦志氏らが各自の視点からブラジルの社会思想の潮流を語っている。
 本書制作の目的について小池氏らは、実利に結びつきやすい学問が重視される昨今の風潮を危ぶみ、本書を通じて社会問題の理解と解決に必要な歴史学分野の学習機会提供を行いたいとはしがきにおいて述べている。
 また、ブラジルは人権や環境保全、多文化主義などの分野で先駆的な取り組みを数多く行っており、その背景となるブラジルの社会思想を学ぶことは、今後の日本や国際社会にとって重要な意味を持つと語っている。
 全512ページ。税別3300円。日本の各書店から購入できる。

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