サンタマリア市空港での飛行機搭乗時、乗客管理システムへの日本人名登録ミスが原因で、乗客確認に手間取り、離陸予定に遅れが生じた。客室乗務員が何度も違う名前を読み上げる度、一行の緊張感と不安が高まった。
最終的に無事解決し、ようやく飛行機が動き始めた。パイロットのポルトガル語での機内アナウンスが終わると、今度は日本語でのアナウンスが始まり、一行は驚いた。パイロットの心遣いに客席の約半分を占める日系人客の心は舞い上がった。
約1時間のフライトで州都ポルト・アレグレに到着。斉藤恒子さん(72歳、福岡)は機体が停止するや、真っ先に客室乗務員を呼び寄せて操縦室へ向かった。日本語で挨拶を行ったパイロットに挨拶するためだった。
斉藤さんは「日本語でアナウンスしてくれてとても嬉しかった。パイロットに直接会えて胸がいっぱいになった」と珍しい経験に 満面の笑みを浮かべた。
日本語で挨拶したパイロットは日系2世のフェリペ・キリュウさん(35歳)だった。過去に3年間ほど日本語を学んだことがあるが、日常的に使わないために大分忘れてしまったと話す。「多くの日系人が飛行機に乗るのを見て、『温度』とかなんて日本語で言うか思い出せなかったけど、覚えている単語で何とかアナウンスをした。喜んでもらえて本当に嬉しい」と照れ臭そうに微笑んだ。
一行は観光バスに乗り、そのままポルト・アレグレ市のガウーショ伝統レストランで現地の日系コミュニティと交流を行った。ガウーショ名物のシュラスコを扱う同店は、ガウーショ伝統センターと呼ばれる施設の一つで、伝統芸能などの披露も行われる。
交流会には南日伯援護協会(南援協)、ポルト・アレグレ文化協会などから15人が参加した。谷口ヒロシ南援協会長による挨拶が日本語で行われた。谷口会長は「会館などのおもてなしできる場所はないが、有名なこのレストランで伝統的なショーを堪能してもらいたい」と述べ、歓迎の意を示した。
谷口会長によると州都近郊には日系人家族は400ほどしかおらず、南大河州全土にも4~5千人ほどしかいないという。
婦人3人のテーブルに記者も同席した。現地に住む日本人とサンパウロ市から来ている女性らは花嫁移民「ききょう会」仲間だった。久しぶりに再会したという彼女らは息子や孫などの写真を見せ合い、世間話や思い出話などに浸っていた。(続く、仲村渠アンドレ記者)