注目されない「上議を目指すボルソナロ」

ボルソナロ氏(Natanael Alves/PL)

 「ボルソナロ前大統領が2026年の選挙で上院議員を希望している」。フォーリャ紙などの大手紙も報道していることなのだが、なぜかこれが今、あまり話題になっていない。ボルソナロ氏には2026年大統領選でのリターン・マッチの可能性が十分あるにも関わらずだ。
 騒がれない要因として考えられるのは、昨年の大統領選の際に犯したとして突き付けられている16もの選挙法違反の訴状のいずれかで有罪になり、選挙戦どころではなくなるだろうとの憶測や、1月8日の三権中枢施設襲撃事件で過激なイメージのボルソナロ派への風当たりが強まっていることなどが挙げられる。
 しかし、こうした要因以上にコラム子が注目していることがある。それは、ボルソナロ氏本人の「素顔」や「本音」が伝わり始めているからというものだ。最たるものは「ボルソナロ氏の神格化の終焉」だ。
 同氏のあだ名といえば「ミット(伝説)」や「メシア(救世主)」だが、昨年の選挙結果を覆すという「奇跡」を起こすことができなかった上に、自分のために一生懸命抗議活動を続けていた人を放って米国に飛び立ってしまった。支持者が幻滅感を覚えたであろうことは想像に難くない。
 米国から帰国した際も往時ほどの盛り上がりはなかった。かつてならネット上で「不死鳥」などと呼び称えられ、盛り上がっただろう。そうならなかった背景には、支持者の幻滅と神格化の終焉があるように思える。
 むしろこの「上議を目指したい」という言葉こそがボルソナロ氏の本音であると支持者に悟られているのではないか。
 在任中から、加熱する自身への報道を前に「大統領という仕事がこのように面倒なものとは思わなかった」と口走っていた。昨年の大統領選の際も「国のために尽くしたいから再選したい」と言うのではなく、「大統領でなくなると不逮捕特権がなくなって逮捕されるのが怖いから」との言動を行っていると度々報道されている。
 「本音では、もう大統領をしたくないのだろう」。支持者にはそう伝わってしまっているのかもしれない。
 ボルソナロ氏は上議を希望している以外にも「野党のリーダーだけでなく、何のリーダーにもなりたくない」と語り、すでに所属の自由党(PL)を当惑させている。
 ボルソナロ氏のカリスマ性演出活動を担っていたネット隊長役の次男カルロス氏も、その役目を降りることを今週発表した。これは昨年の大統領選時の当コラムでも書いたが、やはり親子共々「燃え尽き症候群」になっているのではないだろうか。この先どうなるか。(陽)

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