サンパウロ州政府が虚偽情報発信=ウクライナ公社が投資中止?!=ルーラ発言理由に、局長引責か

 26日、CNNブラジルが「ウクライナの国営企業がルーラ大統領の言動を理由に投資から手を引いた」という情報を流したが、それが同社により事実無根とされた。そのため、その情報元となったサンパウロ州政府国際渉外局長のルーカス・フェラス氏の責任が問われる事態となった。27日付フォーリャ紙(1)などが報じている。
 事の発端は、24日付のCNNブラジルが「ウクライナの航空公社アントノフが、ルーラ大統領のウクライナ紛争への言動を理由に500億ドルを投じる予定だった飛行機工場の建設から手を引く」と報じたことだった。
 その情報はサンパウロ州の国際渉外局が26日に出した文書でも確認された。文書では、同社の代表たちが11日に話し合った商談の中断を決めたとしている。同局によると、11日にアントノフ社の取締役と副社長がサンパウロ市のバンデイランテス宮(州庁舎)を訪れ、ブラジル、特にサンパウロ州での開発事業に興味を示し、サンパウロ州とパラナ州に飛行機製造のための工場建設など、500億ドルの投資を行う意向を表明していたという。
 この報道は、ネット上でニコラス・フェレイラ下議(自由党・PL)などがルーラ政権を厳しく批判するなどしたため、広く知られることとなった。
 ところが26日、アントノフ社がこの報道を否定した。アントノフ社は、同社はブラジルを含めた諸外国との共同事業に関して公式に物事を進めていることは認めたが、報道されたような投資計画はないと主張。さらに、ブラジル国内には同社の代表はおらず、事務所も存在していないと述べた。
 この報道を受け、CNNブラジルは同日、「連邦政府の社会情報通信局(Secom)に確認しないまま報道してしまった」と謝罪する記事を出した。
 これを受け、タルシジオ・デ・フレイタス・サンパウロ州知事は27日、ルーラ大統領に電話を入れ、事情説明を行った。24日のCNNブラジルの報道後、大統領はネット上で「虚報を流した」としてタルシジオ知事を批判するなど、険悪な事態となっていた。
 タルシジオ知事はこの責任を追及すべく、ルーカス・フェラス国際渉外局長を解任する意向であることを伝えている。同局長はタルシジオ知事が3月末に公私共同投資(PPP)の事業交渉を行うために欧州に向かった際に同行したスタッフでもあり、同知事がロンドンで腎臓結石の痛みに見舞われ、緊急手術を行った際には代理で交渉も務めていた。
 今回のCNNブラジルの報道は、ルーラ大統領がウクライナ問題に関する見解を変えようとしていた時に起きたことでもあった。大統領は現地時間の25日にポルトガルの議会で行った演説で、これまでの「ウクライナ紛争はウクライナ、ロシアの双方に非があり、米国や欧州が引き伸ばそうとしている」との見解を転じ、ウクライナ侵攻を強く批判する発言を行っていた。
 一方、ウクライナのシュミハリ首相は27日、ローマでの記者会見で「自分や家族を殺しに来た強盗とすぐに和解しろというようなものだ」と、ルーラ大統領の提唱する和平案を皮肉っている。

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