テレグラム、虚報対策法案に批判声明=「ネットが殺される」と拡散=政府反発、最高裁が削除命令

 SNSプラットフォームのテレグラムは9日、連邦政府の進める虚報(フェイクニュース)規制法案「PL2630/2020」を批判するメッセージを拡散。それに対し、連邦政府が不満を示し、最高裁に訴える構えに出ている。テレグラムはブラジル司法界と対立し、国内での運用差し止め所分を受けたこともある。9日付CNNブラジル(1)(2)(3)などが報じている。
 9日、テレグラムは全利用者にPL2630に警戒するよう呼びかけるメッセージを拡散した。そこには「ブラジルは表現の自由を終わらせる法案を通過させようとしている。PL2630は司法当局の監査を経ず、言論統制を行う権力を政府に持たせるものだ」と書かれた上、「基本的人権から見て、同法案はブラジル史上、最も恐ろしいものの一つ。現状のままの法案ならインターネットが殺される」と続けられていた。
 SNSプラットフォームはかねてからPL2630に強く反対しており、グーグルやTikTokなどの大手ハイテク企業(Big Teck)は4月末から5月にかけてPL2630に対する反対運動を展開。これは2日のはずだった下院での投票を無期延期させる原因ともなった。
 だが、今回は、もともと問題視されていたテレグラムが批判したために反発が強かった。テレグラムは以前から、ツイッターなど、他のプラットフォームのアカウント使用を禁じられた人たちが、問題となった言動を続けるために使用するというイメージを国際的にもたれている。
 ブラジルでも、昨年11月にエスピリントサント州アラクルスの学校を襲撃し、4人を殺害した16歳の少年がテレグラム内のネオナチのアカウントに出入りしていたことが話題となった。また、他の事件でも同様のことが起き、虚報拡散が問題視されたことで国民からの声が高まり、法案審議を早めるに至った経緯もあった。
 また、テレグラムと司法界はかねてから対立している。最高裁は2月に、同裁のデジタル犯罪捜査の対象者への資金提供の嫌疑がかかったアカウント三つを凍結するようテレグラムに命じた。4月には、連邦地裁からの度重なるネオナチ・アカウントの情報提供依頼をテレグラムが拒否し続けたため、4月26日に連邦地裁が運用停止措置をとり、ブラジル内での運用が一時的に止まる事態も起きた。
 テレグラムによるメッセージ拡散を知ったパウロ・ピメンタ通信相(労働者党・PT)は「ばかげている」と一蹴。「どこの外国企業もブラジルの主権を超えることはできない」とし、最高裁に訴える構えを見せた。
 PL2630の報告官のオルランド・シルヴァ下議(ブラジル共産党・PCdoB)も、「世界のプラットフォームによる汚いやり方が続いている」と批判。「インターネットは無法地帯ではない」との自身の見解を改めて強調している。
 なお、デジタル犯罪捜査担当のアレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事が10日午後、9日に流したメッセージ削除と、「9日のメッセージはPL2630に関する議論を歪め、法治国家としてのブラジルと民主主義、議会、司法界に対する明白で違法な偽情報だった」と伝えるメッセージの掲載を命じ、従わなかった場合は72時間の運用停止とする司法判断を下したため、9日のメッセージは削除され、最高裁が命じたメッセージが全ユーザーに送られた。

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