10日昼前、マリーナ・シルヴァ環境相が退院許可を得たとの報道が出た。彼女は風邪のような症状のため、6日にサンパウロ市のInCor病院で検査を受け、新型コロナに感染していたことが判明して入院していた。
同氏の入院は世界保健機関(WHO)が新型コロナの緊急事態終結宣言をした翌日のことだった。同氏は直前まで様々な会合に出席するなど、忙しくしていたため、感染経路や濃厚接触者の有無が気になったが、その点は彼女も気にしていたらしい。
10日退院の可能性を報じた9日付の記事(1)には、彼女が自身のSNSアカウントで、適切な治療を受けて症状が改善してきたことだけでなく、自分と共に行動した人や同じ場所に居た人は新型コロナへの感染の有無を確かめるように勧めていると書かれていた。
彼女の入院は、WHOが新型コロナ緊急事態終結を宣言したとしても、感染が起きなくなったという意味ではないことや、今後も引き続き、予防接種や手指消毒などの感染防止策を継続する必要があることを示す一例だ。
事実、ニジア・トリンダデ保健相は7日、新型コロナによる感染や死は続いており、今こそ監視や診断、支援、予防接種システムを強化する必要ありと述べると共に、新型コロナウイルスは変異し続けており、常に注意を払う必要があることを強調している(2)。
一方、8日には、マリーナ氏の出身地のアクレ州の医師の一部がワッツアップのグループで、彼女が感染・入院したニュースと共に「予防接種は受けていたんだろう?」と皮肉り、「命や生活に関わること。それはワクチン接種だ!」とコメントしたりした上、「(彼女よりも)新型コロナウイルスが無事だといいけれど」と笑いながら言った医師もいたとの報道(3)もあり、啞然とした。
予防接種は感染を完全に防ぐことはできないが、重症化や死亡可能性を減らしてくれる。そのことはワクチンの開発中から言われてきたことだし、医師が患者を揶揄し、こんな会話を交わしていたことはある意味で嘆かわしい。
マリーナ氏はゴムの樹液採取人として育ち、肝炎やマラリア、水銀汚染、リーシュマニア症などの病気や健康上の問題に直面してきた。それだけに、新型コロナの予防接種も4回受け、健康管理にも人一倍気を使っていた。
その体験が、自分の治療経過についてだけでなく、感染の有無を調べるようにとの勧めをSNSにも書き込ませたのだろうと考えると、現在のような状況下で笑いつつ、前記のような会話を交わせる医師がいることは驚きである。
人の痛みや病の苦しみがわかる医師は患者にも安心感を与えてくれる。新型コロナは笑いの種にできる相手ではなく、予防接種を受けていても安全とは言い切れない怖さを残していることを忘れず、ウイルスと共生する術を学びたい。(み)