第1~2期ルーラ政権の外相で現在は大統領付外交問題特別顧問のセルソ・アモリン氏が10日、ウクライナのゼレンスキー大統領らと会談し、ロシアによる同国侵攻や両国の関係修復などについて話し合ったと同日付アジェンシア・ブラジルなど(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)が報じた。
アモリン氏の同国訪問は、ルーラ大統領がウクライナ侵攻は露・ウ両国の責任、欧米諸国が紛争を長引かせていると発言し、気まずい雰囲気が生じた後の4月末に決められた。
ルーラ氏は当時も、国際的なグループを作り、露・ウ両国を停戦に向けたテーブルに着かせるとの意向を表明しており、他国の領土への侵攻・侵略を批判する発言を行ってウクライナをなだめようともした。だが、アモリン氏が訪問したのはロシアのみで、ロシア外相がブラジルやベネズエラなどを歴訪したことなどもあり、国際社会からの批判や気まずさは残っていた。
そこで進んだのが、4月初旬にロシアに赴き、プーチン氏の考えも知るアモリン氏をウクライナに送り、双方の考えを聞き、国際的な仲裁班による停戦交渉を進める案だ。
ゼレンスキー大統領との会談は40分余りで、内容は明らかにされなかったが、アモリン氏の訪問が好意的な評価を得たことは、外相代行として会合に参加したアンドリー・メルニク外務副大臣が流した、「ブラジルはロシアの侵略を阻止し、永続的かつ公正な平和を達成する上で重要な役割を果たせるだろう」とのツイートや、同氏が在ブラジル・ウクライナ大使として赴任するとの発表からもうかがわれる。
アモリン氏も会談を肯定的に見、会談は平和裏に行われたと語った。そういう意味で、ルーラ氏が9日に示した「解決策自体ではなく、解決に向けた兆候を示すものを持ち帰ること」という期待は果たせたようだ。
ルーラ氏自身は9日もオランダのマーク・ルッテ首相の訪問を受け、ウクライナ問題などを話し合った。同首相は会談後、「ブラジルが考えている措置は解決策を探り、平和を求める上で非常に重要。ブラジルのような経済大国やルーラ氏のような指導者が解決策を見つけるために協力してくれることが大切だ。全てはウクライナ大統領のリーダーシップの下で始められるべきだと信じている」とした。
ルーラ氏は同日も、和平協定交渉に向け、中国やインドを含む仲裁グループ結成のために「多大な努力をしている」と強調した。オランダ首相との会談やアモリン氏のウクライナ訪問は、今月下旬のG7首脳会議にゲスト参加するルーラ氏が掲げる、中立な立場で対話による紛争解決をとの姿勢をより強固にしたといえそうだ。
ただ、10日付カルタ・カピタル(9)によると、アモリン氏は双方が折れる(譲歩する)ことが必要としているが、11日付G1サイトなど(10)(11)によると、ゼレンスキー大統領は11日、ラ米諸国とウクライナの間の首脳会談開催やルーラ氏の同国訪問の可能性も話し合ったことを認める一方で、「唯一の解決策はウクライナが掲げているものとアモリン氏に伝えた」とツイート。10日には在メキシコ同国大使でラ米担当でもあるルスラン・スピリン氏も「誰かがアマゾンを侵略したら黙認するか」という表現でロシアの行為を批判しており、国際的なグループによる和平交渉実現への試みや早期の紛争停止は容易ではないことがうかがわれる。