トレス前法相=4カ月後にようやく保釈=不作為やテロ文書の疑いで=帰宅後も厳しい条件付き

トレス容疑者(Marcelo Camargo/Agencia Brasil)
トレス容疑者(Marcelo Camargo/Agencia Brasil)

 11日、最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事は、1月以降、拘束が続いていた前法相のアンデルソン・トレス容疑者を保釈する判断を下した。この間に有罪判決は出ておらず、4カ月間ずっと逃亡などを防ぐための予防拘禁状態だったが、司法取引する気配を見せず、その状態を続ける法的理由がなくなったため、保釈となった。11日付G1サイト(1)などが報じている。
 トレス容疑者は、連邦直轄区保安局長に就任して間もない1月6日に突如、米国に向かい、その2日後の1月8日に三権中枢施設襲撃事件が勃発した。
 トレス氏は事件直後にイバネイス・ロシャ知事によって更迭された。さらに、襲撃事件が起きるとの情報があったにも関わらず何の対策も講じなかった不作為に問われ、1月10日にモラエス判事から逮捕命令が出された。
 連邦警察は逮捕命令が出た直後に行ったトレス氏の自宅の家宅捜査で、昨年の大統領選終了後に作成したと見られる大統領選の結果を覆す法案のコピーを見つけた。トレス氏は「受け取って処分しようとしていたもの」と釈明したが、この文書が見つかったことで、ボルソナロ氏を支持する人たちによるクーデターへの関与も疑われることとなった。
 トレス氏は1月14日に帰国すると、そのまま逮捕。それからは約4カ月間、ブラジリアのグアラーにある軍警第4大隊内で拘束されていた。
 その期間中、上記のことに加え、昨年10月30に行われた決選投票の1週間ほど前に北東部に赴き、連邦道路警察(PRF)に対し、ルーラ氏の支持者が多い地域の幹線道路を狙って投票当日に取締りを行うよう命じたとの嫌疑もかけられていた。同氏が10月24日に空軍機を使ってバイア州に向かったことは確認されており、選挙高裁の中止命令に反した投票日の取締りも行われたが、トレス氏は5月8日の事情聴取で、「PRFには干渉していない」とし、関与を否定している。
 拘束期間中、トレス容疑者は弁護士を通じて体調や精神の不良などを訴え、保釈を求め続けていたが、否定されていた。今回は5回目の請求でようやく認められた形となった。モラエス判事は釈放の理由として、「捜査妨害などの可能性がなくなり、これ以上、拘束する理由がなくなったため」としているが、娘の精神状態が不安定であることや母親が闘病中であることも考慮されたようだ。
 モラエス判事が出した条件は厳しく、自宅での電子足環着用の他、「夜間と週末の外出禁止」「SNSの利用禁止」「銃やパスポート没収」「捜査に関する言及禁止」「連邦警察官としての職務は一時停止」「毎週の裁判所への出頭義務」などを科している。
 保釈が決まると、前大統領三男のエドゥアルド下議などのボルソナロ派の政治家が次々と、喜ぶ声明を出していた。
 なお、CNNブラジルは同日、最高裁がすでに入手している録音記録の一つで、ある最高裁判事の仮想的で違法かつ非民主的な逮捕(誘拐)計画について話し合っている会話の中にトレス氏も登場していたと報じている。

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