5月30日朝、いつものようにあちこちのサイトの記事に目を通していて、背筋が寒くなった。法定アマゾン内6州で採取された魚のサンプルから許容量以上の水銀が検出されたことを示す記事が見つかったからだ。
見出しには「庶民が食べる魚が汚染されている」(1)とあり、調査員達は、これは公衆衛生上の問題であり、金の精製に水銀を使う不法採掘が原因と見ていると書かれている。恐れていたことが起きているのだと実感した。
法定アマゾンでの金の不法採掘は以前からある問題だ。1月にロライマ州ヤノマミ族居住地で健康上の非常事態が宣言された時も、先住民達の間で栄養失調や水銀中毒などの問題が起きていることが報じられており、水銀汚染もかなりの範囲に及んでいることは容易に予想できた。
それでも、魚の水銀汚染が6州で確認されたことや、アクレ州リオ・ブランコではサンプルの35・9%から許容量の6・9~31・5倍という高濃度の水銀を検出(2)。ロライマ州ボア・ヴィスタでもサンプルの40%が5・9~27・2倍の水銀を含んでいたという内容には息をのんだ。
比較的軽度だったアマパー州とパラー州でも11・4%と15・8%の魚から許容量を超える水銀が検出されたという。
ちなみに、検査が行われたのはアマゾナス州、ロンドニア州を加えた6州17市で、アマゾナス州のサンタイザベル・ド・リオ・ネグロとサンガブリエル・デ・カショエイラでは半数の魚が水銀に汚染されていた(3)。
妊婦や子供の体内蓄積水銀濃度が高いという報告には、懸念がより深まった。
水銀で汚染された魚を食べ続けていると何が起こるかは、1950年代から60年代にかけて熊本県や新潟県で起きた水俣病を考えればよく分かる。
水俣病では、付近の工場から排出された廃液に含まれていたメチル水銀で汚染された魚や貝を食べていた人達に手足や口のしびれといった症状が出て、死亡する人もいた。熊本で認定された患者は2200人、新潟では700人が認定された。
ブラジルではまだ、公害病に認定された患者に関する報告は出ていないようだが、正しい措置を施さず、精製後の水銀を垂れ流す状態が続けば、ブラジルでも水俣病は起こり得る。否、きっと起きている。
他国での例に学び、早めの規制を行わなければ、水銀による公衆衛生上の問題が広がることは明らかだ。アクレ州での汚染は隣国での不法採掘が原因との声もある。国内外の行政、保健、監視機関の総力を挙げた早期対策を望みたい。(み)
(3)https://roraimaemfoco.com/peixes-em-seis-estados-da-amazonia-tem-contaminacao-por-mercurio/