ある晩、サンパウロ市のパウリスタ大通りを歩いていると、ホームレスから「日本人はみんな優しい。尊敬している」と話しかけられた。続けて彼は「1レアル(約28円)で買える弁当があるから1レアルくれ!」と土下座せんばかりの勢いで頼み込んできた。
その日は機嫌がよかったこともあり、5レアル札を渡すと、彼は札を空に掲げ、まるで神が舞い降りたかのように感謝し、日本語で「ありがとーーーーー!さよならーーーー!」と叫び去っていった。
呆気にとられながら「それにしても1レアルで買える弁当なんてあるのか?お金をもらうための嘘だろうか」と疑問が湧いた。
後日、ネットで検索したところ、本当に1レアルで買える弁当があることがわかった。
1レアル弁当は、サンパウロ州政府による弱者救済プログラム「ボン・プラット」の一環で販売されている弁当のことだった。
同プログラムは2000年12月28日から開始され、州内107カ所で実施されている。昼食、夕食は1レアル、朝食はなんと50センターボだ。値段は23年間変わっていないという。
彼が本当に弁当を買ったかは定かではないが、彼が正直者だとすると日本人を褒めちぎっていたのも単なるおべっかではないかもしれない。そして彼の正直な求めにコラム子が応じることができたのだとすれば、その気分は悪いものではない。(淀)