ルーラ大統領は1日、リカルド・レヴァンドウスキー氏の後任の最高裁新判事としてクリスチアーノ・ザニン氏を指名した。同氏はラヴァ・ジャット裁判なども担当したルーラ氏の個人弁護士として知られ、それ以前のルーラ氏の担当弁護士だった人物の義理の息子でもあるなどのことから、指名を巡り、難色を示す声も少なくない。1日付フォーリャ紙(1)などが報じている。
クリスチアーノ・ザニン・マルチンス氏は1975年に弁護士の息子として生まれ、キリスト教大学聖市校で法学を学んだ。
専門は訴訟法と企業法で、2000年から弁護士となり、大手企業の弁護にも就いた。2004年に、ルーラ氏の担当弁護士を40年以上務めたロベルト・テイシェイラ氏と共に法律事務所「テイシェイラ・マルチンス」を開く。ザニン氏はその前年にテイシェイラ氏の娘で弁護士でもあるヴァレスカ氏と結婚している。
ザニン氏は2013年からルーラ氏の弁護団の一人となったが、同氏の名が知れ渡るようになったのは、2017年に始まったルーラ氏のラヴァ・ジャット(LJ)作戦での裁判だ。ルーラ氏は収賄などの嫌疑で2審でも有罪となり、2018年から実刑に服した。
だが、ザニン氏の立ち合いで行われた翌2019年の最高裁での審理でルーラ氏の釈放が決まった上、LJ判事だったセルジオ・モロ氏によるルーラ氏の裁判に偏りがあったとの21年の最高裁での判断の際も弁護士として立ち合った。
また、ザニン氏は2018年に、現在の欧米での裁判の主流の手法となっている「ローフェア」を紹介する本を夫人との共著で出版。司法界で話題の一冊にもなっていた。
実刑に服していたところから被選挙権を回復させたこともあり、ルーラ氏のザニン氏への信頼度は高く、大統領に就任して間もない頃から最高裁判事の候補としてザニン氏の名前を挙げていた。
だが、ルーラ氏との関係が近すぎることを理由に、反対する声がその頃から上がっていた。反対していたのは野党が中心で、3月には5千人を超える弁護団からザニン氏の指名反対の署名運動が起きていた。1日の指名直後もジャーナリストのミリアン・レイトン氏が「私的関係を排除してきたこれまでの伝統が覆される」と批判を行い、話題となった。
その一方で、最高裁判事たちはザニン氏指名には好意的で、各判事がそれぞれに歓迎する発言を行っている。
また、大御所弁護士のアントニオ・カルロス・デ・アルメイダ・カストロ氏(通称カカイ)をはじめ、司法界でもザニン氏の手腕を高く評価する声は少なくない。
最高裁判事は大統領から指名を受けた後、上院憲政委員会で口頭試問(サバチーナ)を受け、本会議で承認されるという手順を経て就任する。口頭試問は近日中にも行われる見込みだ。
ザニン氏のサバチーナには、LJ裁判で対決したモロ上議やボルソナロ前大統領長男のフラヴィオ上議といった強い反対派が参加することが予想され、厳しい質疑応答も予想されている。
だが、1日付エスタード紙は、野党側も既にザニン氏の上院承認を予想していると報じている。