【ブラジル日本移民115周年記念特集】ブラジルに貢献するビジネスで恩返しを=ブラジル日本商工会議所会頭 小寺勇輝

小寺勇輝

 日本移民115周年を迎えるにあたり、日系社会をはじめとする皆様に心からお慶び申し上げます。

 冒頭から私事になりますが、私は1990年に会社の研修員として初めてブラジルの地を踏みました。リオ・デ・ジャネイロ空港の外を出ると蒸し暑い空気の中にアルコール車の独特な匂いが漂い、ホテルに向かう車の中からヤシの木の並ぶ海岸、地面から飛び出す奇岩、多様な人種を目のあたりにして遠い異国に来たことを実感したことを今でも覚えています。
 過去の駐在はリオ・デ・ジャネイロでサントスを訪問する機会がありませんでした。今回サンパウロに着任し初めてサントスを訪れ、サントス移民上陸記念碑を見学しました。
 1908年6月18日第1回日本移民の方々が笠戸丸で期待と不安を持たれながらブラジルに到着されましたが、私よりも数倍大きな衝撃があったと想像します。それ以降日本移住者並びにその祖先の方々は今日に至るまで、様々な苦難を努力と共助の精神を持って力を合わせて乗り越えて来られました。
 ブラジルの発展そして日本人、日系人としての信頼をブラジル国民から獲得し、両国間の友好の架け橋として日伯関係の深化に貢献されてきたことに対し敬意を表すると共に深謝申し上げます。
 ブラジル日本商工会議所会員の多数は日本からの進出企業となっています。ブラジルは日本企業との商談や取引を快く受け入れてくれ、信頼の置けるパートナーとしてみてくれています。
 ブラジルは他国とは異なり日本人というだけで温かく迎えてくれ、日本企業にとり仕事がし易い国となっています。日本企業の多くが日本人移住者並びに日系人の努力のお蔭によりブラジルで事業展開出来ていると言っても過言ではないと思います。そうした中、日本企業は日系人の皆様が誇れるような、ブラジルそして世界に貢献するビジネスを創り、恩返しをしていくことが求められています。
 価値観の多様化が進む世の中に於いて、一人ひとりがアイデンティティを持つことが重要になっています。異国の地を踏み、異文化に触れ、苦難を乗り越えて様々な経験を通じて自分のアイデンティティが磨かれていきます。親から子へ価値観の一部が受け継がれますが、子供は親とは異なる新たなアイデンティティを創っていきます。
 日本移民115年の歴史の中、日本からの移住者並びにブラジルで生まれた日系人の方々は夫々のアイデンティティを創り上げてこられました。「日本移民の日」は自分のアイデンティティを見つめ直す日にしては如何でしょうか。

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