2日目の昼過ぎ、鉱物コレクターの斉藤猛さんの案内で、ジアマンチーナ市の入口付近の幹線道路沿いにあるフェルナンデス兄弟(ポルトガル系伯人)が経営する宝石店を訪問する。表から見える店頭は一見すると質素な造りだが、中に入ると各部屋が入り組んでおり、階下にも空間が広がっていた。店内には、水晶をはじめ、トルマリン、アクアマリンなどの宝石類と鉱物が所狭しと陳列され、数センチ程度の品物から高さ1メートルほどの巨大なアメジスト(紫水晶)など種類も大きさも様々だ。
フェルナンデス兄弟の弟のビセンテさん(60歳)によると、欧米から来た買い付け業者が数日前に大物の注文をしていったとし、コロナ禍の中でも案外、繁盛しているようだった。それでも、斉藤さんの話では、コロナ禍でブラジルに来れなかった3年の間に鉱物の仕入れ値は高騰し、コレクターとして日本に持って帰れる品物は以前に比べて数少ないそうだ。
店内を見回しながら、記者も土産として水晶の一つでも買おうかと思っていたが、想像以上の高値で手が出ず、「目の保養」だけに留めた。
ビセンテさんは斉藤さんと40年来の旧知の仲であることから、普段は一般の顧客には見せないような品物まで見せてくれる。宝石店から道路沿いに約100メートル離れた倉庫に案内され、中に入ると採掘現場から採ってきたばかりだという水晶の塊が無造作に置かれていた。水晶の塊にはまだ土が付着しており、高圧洗浄した後にさらに酸で洗い、商品化するという。洗浄作業も従業員には任せず、ビセンテさん自ら行うとし、水晶に懸ける思いが伝わってくる。
倉庫の中でビセンテさんが、ラグビーボール大の楕円形の水晶の中に天然水が入った品物を見せてくれた。同氏いわく、何億年も前の天然水が水晶に自然に閉じ込められたもので、非常に貴重な逸品だという。
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3日目。ビセンテさんが、自身が商売として扱っている水晶の採掘現場に連れて行ってくれるというので、宿泊するホテルから斉藤さんとともにビセンテさんの運転する車に乗り込んだ。町中ではファルナンデス兄弟は顔が広く知れているようで、車をゆっくり運転しながらビセンテさんは町を歩く知り合いたちに車窓から声を掛け、笑顔を見せる。
町から北東方面に約35㎞離れた通称「カバサッコ」と呼ばれる水晶の採掘場は、採掘権を持った関係者しか立ち入ることが出来ず、その入口には「私有地 入場禁止」の看板とともに車では侵入できないように門構えが施されてある。斉藤さんとビセンテさんの話では、10年前には一般の観光客向けの採掘現場を巡るツアーもあったそうだ。しかし、5年ほど前からブラジル政府が環境問題の影響があるとし、鉱物の採掘規制を強化。現在はIBAMA(ブラジル環境・再生可能天然資源院)が採掘現場の見回りを行い、関係者以外の一般の入場が規制されているほか、無許可で採掘行為を行った場合は罰金が科されるという。(つづく、松本浩治記者)