ルーラ大統領は19日、閣僚再編を求める中道勢力セントロンに対し、ニジア・トリンダーデ保健相の「交代はありえない」との意向を伝えた。同日付CNNブラジルなど(1)(2)(3)が報じている。
ニジア氏が務める保健相の座はアルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)をはじめとするセントロン勢力が強力に求めていた。リラ議長は、連邦議会における連邦政府の政局調整(アルチクラソン)に不満を持ち、セントロン内の政党に大臣職などを振り分けることをセントロンによる連邦政府支持の条件として提示していた。
その一つが、ダニエラ・カルネイロ観光相の人事についてだ。ダニエラ氏はウニオン内部のお家騒動でウニオン側が解任を求めていた。ルーラ大統領は昨年の大統領選でリオ州でのキャンペーンを手伝った同氏を解任することを渋ったが、既に数人の大臣を擁し、下議59人を誇るウニオンの支持を堅持するため、現在はダニエラ氏からの辞意表明という形での閣僚交代を待っている段階だ。ただ、決定はルーラ氏の欧州歴訪終了後となる。
だが、セントロン側が求めたもう一つの座である保健相の交代に関しては対応が違っている。CNNブラジルが報じたところによると、ルーラ氏はニジア保健相の交代に関して「断固としてありえない」と側近に伝えてあるという。
また、大統領府の広報役であるパウロ・ピメンタ社会通信局長官も19日、グローボ・ニュースでのインタビューで、ニジア氏交代の「チャンスはゼロ」と明言した。
セントロンが保健相の座を欲しがった理由の一つは、予算額の大きさだ。2023年の保健省の年間予算は1900億レアルで、全省庁の中でも屈指の額となっている。
そのため、セントロン側は保健相の座をめぐり、ニジア氏に代わる候補をセントロン側の政治家から出そうと動いていた。その第一候補はリオ州保健局長のルイジーニョ氏(PP)だった。同氏は医師で、休職中の下議でもある。
だが、同氏はボルソナロ政権時にエドゥアルド・パズエロ保健相に代わる後任候補とも目されたことや、昨年の大統領選でもボルソナロ氏を支持していたことに加え、ボルソナロ政権で官房長官も務めたPP党主のシロ・ノゲイラ氏とのつながりも強い。
こうしたことからルイジーニョ氏の案は却下され、同じく医師のイラン・ゴンサルヴェス氏を後任に擁立しようとしていた。
しかし、ルーラ氏はそれに応えなかった。それはニジア氏の人事が政党に任せたものではなく、ルーラ氏の個人的な推薦によるものだったためだという。
ニジア氏はオズワルド・クルス財団(Fiocruz)の会長として国民へのコロナワクチンの接種促進に努めていた人物であったことなどから、ルーラ政権の中でも好評を得た人事の代表例だ。