宝石の街ジアマンチーナ巡り=5=水晶採掘現場「カバサッコ」のガリンペイロたち

「カバサッコ」の水晶採掘現場

 地元宝石取り扱い業者のビセンテさんの案内で、水晶採掘現場「カバサッコ」に特別に入れてもらうことができ、内部を見て回る。標高約1500メートルで、私有地である同地はガリンペイロ(山師)たちが住む集落となっており、現在40人ほどが生活しているという。
 現場はブラジル特有の赤茶けた土が各所で掘り返されており、直径1、2メートルほどの穴が所々にあいている。その周辺には粉砕された石英の白い粉が土に混じっているため、歩いていると細かい白砂が靴の中に入り込む。斜面には自然にできた石英が突出しており、注意深く観察すると、その一部に透明の水晶が光っているのが見える。水晶は透明度が高く、形の良いものほど高く売れるというが、辺りには水晶ではない石英の塊がゴロゴロと落ちている。
 同地では50年ほど前から、採掘活動が行われているそうだ。ビセンテさんたちフェルナンデス兄弟も約20年前に同地の採掘権を得て、以前はガリンペイロとして生計を立てていた時期もあったが、現在は鉱物類の買い付けと販売を中心に営業活動を展開している。ブラジル政府の環境規制により、ガリンペイロそのものの数も減少している中、同地の水晶はほとんど機械を使用せずに手で掘っているため、品質も良いという。

現場では直径1、2メートルの穴がいくつも掘られていた

 ある採掘穴で、16歳だというガリンペイロの青年が地下からのロープを巻き上げていた。ビセンテさんが声を掛けると、振り向きながら笑顔を見せる。約20メートルも掘り下げているという穴の下からは男性の声が小さく響いて聞こえるが、その姿は地上からは見えない。相当、奥へと掘り進めているようだ。岩盤が固いために、手掘りで採掘していても穴が崩れることはないとビセンテさんが説明するが、一見しただけで大変な重労働だということが分かる。ビセンテさんの話では、ガリンペイロたちの穴掘り作業は昼間だけでなく、夜間もライトなどの照明器具を使用して行われているという。
 カバサッコの採掘現場を見学した後、同地に住んでいるガリンペイロの住居を見せてもらう。簡素な家の庭には、採掘場から掘り出された水晶の塊が無造作に置かれており、自転車の車輪を利用した手作りの掘削道具用の研ぎ機もあった。この集落のほとんどのガリンペイロはビセンテさんの知り合いのようで、日々の採掘作業を行う男達の服装は土まみれで、その顔と腕は陽に焼けて黒い。
 「ガリンペイロ」と聞くと、目が血走り「恐い」というイメージがあった。しかし、ここのガリンペイロたちはビセンテさんの知り合いでもあることから表情は温和で、笑うと白い歯がこぼれるのが印象的だった。(つづく、松本浩治記者)

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