ブラジル日本商工会議所(商議所、小寺勇輝会頭)は23日、サンパウロ市のブルーツリー・モルンビ・ホテルで定例懇親昼食会を開催した。約130人が参加し、特別ゲストにサンパウロ州財務・企画担当局長のサムエル・キノシタ氏を迎え、「ブラジルの税務行政の近代化とビジネス環境の改善」について講演を行った。
小寺会頭は冒頭あいさつで、6月18日の「日本移民の日」に様々なイベントが開催されたことについて触れ、「日本移民115周年の歴史の重みとブラジル社会に対して果たした大きな貢献は、ビジネスをする日本企業にとっても素晴らしいレガシーとなっている。ブラジルでビジネスをする一人として、ブラジル社会へ貢献するとともに、商議所の活動を活性化させ、日伯の関係強化に努めていきたい」と述べた。
講演者のキノシタ氏は、インスペル大学で経済学を修め、スペインのポンペウ・ファブラ大学で経済学修士号、米国コロンビア大学で統計学修士号を取得した。2019年から21年にパウロ・ゲデス経済大臣(当時)の特別顧問、20年から22年7月までブラジル銀行監事会メンバーを務めた。
キノシタ氏は父方が日本人移民の家系。講演冒頭には「日本人移住者によってもたらされた日本人の心意気はブラジル文化に影響を及ぼし、貢献を果たしている。実業界に占める日本人、日系人の割合は大きい。日本から受け継いだ人格性と尊厳意識のおかげだ」と語った。
現在、キノシタ氏は、サンパウロ州政府と納税者の良好な関係構築、聖州税務局の連邦政府への影響力回復、自由経済をけん引し、国内トップのGDPを占めるサンパウロ州のビジネス環境改善に取り組んでいる。
キノシタ氏は、ボルソナロ政権時代にインフラ省の大臣として手腕を発揮したタルシジオ・フレイタス・サンパウロ州知事について、民間企業のビジネス支援に積極的な姿勢を打ち出し、法律の範囲内でヨーロッパやアジアのビジネス環境に近づけることを目標としているとし、中でも「税務行政の近代化」を喫緊の課題としているとした。
主要先進国では、税務管理に必要な時間が約200時間であるのに対し、ブラジルは7・5倍の約1500時間を要する。税金の還付金が蓄積される点も税制システムの課題点とした。
1960年代以降、ブラジルの税制は時代に即していないとして構造改革の必要性が叫ばれてきたが、サンパウロ州は高い生産力から税収を維持できたため、税制改革には反対してきた。しかし、過去40年で同州の生産性が低下していることを受け、フレイタス知事は税制改革に積極的な姿勢を示しているという。
キノシタ氏は、サンパウロ州は他州と比べて圧倒的にインフラが整備されており、人材も豊富であることから、中長期的には税制改革を行うことで新たな投資も見込まれ、メリットがあるという。連邦制を維持する中で、サンパウロ州の権益を守り、自由経済を活性化したいとの考えを示した。
各社連絡事項では、筑波大学らによる「2023年度日本留学フェア企業説明会」の実施や、商議所運輸サービス部会・課税通関ワーキンググループ活動「新たな通関基準のスタートについて」、Citibank社の「Women in Businessの設立について」実施、国際協力機構(JICA)による「低炭素農業・大豆に係る調査結果報告ワークショップ」の開催案内が行われた。