ブラジルでは今週、ボルソナロ前大統領の選挙高裁での裁判が話題だ。これで有罪になると、ボルソナロ氏は被選挙権を8年もの間、剥奪されることになる。裁判はボルソナロ氏劣勢と予想され、彼の政治生命にも関わる問題のはずなのだが、大統領選で落選した時のようなボルソナロ支持を叫ぶ運動は見られない。
米国では、ドナルド・トランプ氏が2024年の大統領選に向けて支持率を伸ばしている最中だ。あの、2021年1月6日の連邦議事堂の襲撃事件があったにもかかわらずだ。
ボルソナロ氏とトランプ氏は、再選を目指したものの大統領選で落選し、支持者たちが反乱を起こした点で似ている。だが、現在の二人の状況は驚くほど違いすぎる。この差を生んだものは一体何だろうか。
決定的な違いは「選挙に関しての法的な手続きの踏み方」だ。コラム子はそこに尽きると思っている。
トランプ氏はあくまで、2020年大統領選における自身が疑念を抱いた州に対して異議申し立てを行ったのであり、過去の大統領選や選挙システム全体に対して抗議を行ってはいない。
ボルソナロ氏は選挙当初から、選挙システム全体への猜疑心を露わにし、軍人ら国防省関係者を執拗に選挙運営に絡ませようとした。
また、ボルソナロ氏は選挙法違反で訴えられる理由もたくさん作ってしまっている。一例を挙げれば、自身と親しい関係にある道路警察にルーラ氏の支持者が多い地域に交通取り締まりを行うよう要請して、投票妨害した疑いなどだ。票集め政策と批判された社会保障費の急速な支給増大や燃料代の強引な値下げなどもこれに類する。
一方、トランプ氏は選挙法違反を疑われることはしていない。襲撃事件に関しても、トランプ氏は大統領認証が行われる日にマイク・ペンス副大統領(当時)に自分を当選者と宣言するのを願っただけで、閣僚や側近にクーデターを示唆したという疑惑は一切ない。
ボルソナロ氏は、側近のマウロ・シジ氏やアンデルソン・トレス前法相がクーデター疑惑で逮捕され、クーデター計画文書と見られるものまで発見されるなど、その状況は大きく異なっている。
だが、両人の「襲撃事件への影響度」を考えた場合、事件前日に襲撃者たちを煽る集会をしていたトランプ氏の方が、米国で休暇を過ごしていたボルソナロ氏より、はるかにその責任は重いように思える。トランプ氏がその点を問われていないのが不思議なのだが、どうやらこのまま進んでいきそうだ。(陽)