宝石の街ジアマンチーナ巡り=7=約100年の採掘場「トニコ」=息呑む景観テレスフォロの滝

 ファビアーノさん(26歳)は自身の採掘場に向かう前に、「ラゴア・アズール(青い湖)」と呼ばれるジアマンチーナ市から10㎞ほどの距離にある元採掘場を案内してくれた。同地は以前、水晶とともに金(きん)やダイヤモンドも採れたという貴重な場所だが、今は採掘行為は禁止されている。
 「ラゴア・アズール」に入ると、その名のとおり、青空の反射を受けて青く澄んだ色の湖が見えてきた。その周辺には、白い砂が丘のように盛り上がっている。鉱物コレクターの斉藤猛さんの話では、以前同地に連れて来た日本人の画家がキャンバスの下地用に使用するため、この白い砂を喜んで大量に持って帰ったことがあるという。また、一見、浅く見える湖だが、ファビアーノさんによると深さは90メートルもあるそうだ。

「トニコ」の採掘現場

 同地を離れ、今度はファビアーノさんが実際に採掘している「トニコ」という現場に移動する。約100年前から採掘が行われているそうで、長年にわたる掘削作業により、深い峡谷のような地形になっている。固そうな岩盤の合間に樹木が生えて広がり、遠方には岩山が見える。同地で約1カ月前から深さ8メートルほどの穴を2カ所で掘っているファビアーノさん。水晶など売れる鉱物を発見した場合、地主に1割の土地使用料を支払い、残りの9割を共同で採掘している友人と折半する契約になっていると教えてくれた。
 一旦、ジアマンチーナ市に戻って昼食を済ませた後、ファビアーノさんの提案でテレスフォロ(Telesforo)という場所にある滝を見に行くことになった。当初の話では現地まで「30㎞ぐらいの距離だ」(ファビアーノさん)というので片道1時間もあれば余裕で着くものと想像していたが、実際には100㎞も離れていたのだった。しかし、一見の価値がある場所だった。

美しい景観のテレスフォロの滝

 ジアマンチーナ市から西方面に10㎞ほどアスファルトのある幹線道路を通り、その後はずっと土道を走っていく。道が乾燥しているため、対向車とすれ違うたびに砂煙が舞う。途中、何カ所かで休憩するが、そのうちの1カ所では片側に高さ200~300メートルほどの岩山がそびえていた。斉藤さんの話では以前、その岩山の頂上にUFO(未確認飛行物体)が降り立った伝説があるという。
 さらに道を進んでいくと、前方に煙が上っているのが見える。ファビアーノさんの知人が炭焼きを行っている現場で、赤レンガで造られた炭窯(すみがま)がいくつも建ち並び、その煙が噴出しているのだった。
 滝まではさらに30分ほど車を走らせ、手前の入口で入場料(1人20レアル)を支払う。結局、到着までは片道で2時間半ほどかかったが、その景観の美しさに息を呑んだ。視界が開けた前方には小高い山がそびえており、その間の岩場から流れ出る滝が川となって下流に続いている。浅瀬の川沿いにはランバリ等の小魚が群れ、砂浜は傾きつつある太陽光に照らされている。東の空は青く映え、滝の雄大さが強調されていた。同地は観光名所としてジアマンチーナ市の観光案内書にも掲載されている場所だが、この日は平日の夕方とあってか我々以外は誰もおらず、大自然を満喫することができたのだった。(おわり、松本浩治記者)

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