ブラジル宮城県人会(上利エジガール会長)の2階の一部屋で七夕飾りを作り続ける人がいる。伊藤フミエさん(89歳)と佐藤輝子さん(85歳)だ。
6月に村井嘉浩宮城県知事を迎えて行われた70周年記念式典でも竹の飾りと七夕飾りが式典を美しく彩って文字通り華を添えた。
この日本とブラジルの国旗を描いた七夕飾りも、知事の来伯3カ月前から2人でコツコツと作り上げたものだ。
「かつてリベルダーデの七夕祭りをACAL(リベルダーデ文化福祉協会)と一緒にやっていた頃は、10人も15人もそれこそ大人数で作っていたものなんですがねぇ」と伊藤さんは賑やかだった頃を振り返る。「当時の会長さんが『七夕祭り』という名前を商標登録するなんて、気付きませんでしたからねぇ」と、ACALと宮城県人会で共同開催から揉めた時に、いち早く『七夕祭り』というパテント(商標)をACALが登録したことで、結局は宮城県人会がリベルダーデの七夕祭りから締め出された経緯がある。
それでもサンタカタリーナやリオ、アルジャーなどから注文があったりして、新しく作ったり、貸し出したりしており、その都度、伊藤さんたちが2人で作っているそうだ。
「デザインも全部、伊藤さんの頭の中で、スイスイっと作っちゃうのよ。89歳とは思えないですよ」と一緒に手伝う佐藤さんが感心しながら説明する。
「私は編み物や縫い物など好きなのよ。だからこうやって、ボランティアで出来るのね」と伊藤さん。それもそのはずで、伊藤さんは赤間学園の創立者・赤間みちへさんが叔母にあたる。ブラジルに来た当初は駐在員向けの洋服などを作って、生計を助けたという。
ブラジル宮城県人会創立70周年式典後もイビラプエラ公園内の日本館から9月7日のブラジル独立記念日に向けて40本の七夕飾りの注文が入っており、2人で作り続けるという。
華やかな式典ではつい、壇上に上がる人にばかり目が行ってしまうが、その式典を作り出す裏方こそが本当の主役なのかも知れないと、元気な80代の2人を見て、心より尊敬の念が湧き上がった。(大久保純子)
□サビアの独り言□
七夕飾りのみならず、まもなく開催される県連の日本祭でも会場の外で野菜を一生懸命に切ったり、何日も何カ月も前から準備をするボランティアの人たちがいてこそ、「祭り」や「式典」は成功するのだとつくづく思う。そうした人たちを蔑ろにした所からほころびがでてくるのだろう。肝に銘じなければ…。