サンパウロ州工業連盟(Fiesp)がブラジル国際関係センター(Cebri)と共同で実施した調査によると、南米近隣諸国向けのブラジル輸出製品の市場シェアはここ10年間で半分に減り、主に中国などの競合国から市場を奪われ、損失額は107億米ドル(520億レアル)に相当することが分かったと11日付エスタード紙など(1)が報じている。
7月10日付コメックス・ド・ブラジル(2)によれば、中国は2009年に米国を超え、ブラジルの主要貿易相手国となった。以来この14年間、中国との貿易は圧倒的な速度で成長してきた。2023年の最初の6カ月間は、中国との貿易フローが753億7600万米ドルだったのに対し、米国とは2分の1の368億7400万米ドルで終わった。この中国との貿易激増は、ブラジルだけでなく、南米全域で起きている。
南米での貿易に目を向けると、ブラジルから世界市場への輸出がコモディティ(農産物や鉱物製品)を中心に行われているのとは逆に、ブラジルから南米への販売はより付加価値の高い工業製品が占めていたため、その部分を中国などの安価な製品に奪われている形だ。
南米においてブラジルがシェアを失ったのは、機械設備、化学、プラスチック、鉄鋼、アルミニウムなどの金属といった製造・加工業に関する分野が70%以上を占めている。消費財の購入だけを見れば、南米諸国におけるブラジル製品のシェアは10年間で27・6%ポイント低下した。
この縮小の主な要因は中国製品だけではなく、市場によっては米国やインドの競争力も強い。また、ボリビアへの進出を加速しているアルゼンチンや、そのアルゼンチンで市場シェアを伸ばしたパラグアイなど南米地域内でも厳しい競り合いが起きている。
世界銀行のデータによれば、2021年とその10年前にあたる2011年の国別の輸入額を比較すると、南米においてブラジルの代わりに台頭して最もシェアを広げた国は中国で、対南米輸出量が10年間で77%も増加した。この中国の躍進に対して、南米勢としては打つ手がなかった。
22年1月28日付サンパウロ州港湾管理者組合公式サイト(3)によると、中国とブラジルの対アルゼンチン貿易額は2020年に同額を記録。2021年にはブラジルは隣国への最大の輸出国という歴史的な地位を失った。この背景には、アルゼンチンは慢性的なドル不足を乗り切るために中国と通貨スワップ協定を結ぶなど関係を深めてきたこともある。
ブラジルが求心力を失った原因について、国内インフラの遅れ、対外貿易の資金調達の難しさ、輸出にかかる税負担などが根深い問題となっている。同時に南米内でも規制緩和策は難航し、円滑な物流を妨げる障害が依然として多く存在していることも、ブラジルの市場シェア回復を難しくしている。