ベルギーのブリュッセルを訪れているルーラ大統領は17日、フランスやアルゼンチン、コロンビアの首脳と共にベネズエラ問題について話し合い、同国に対して民主的な大統領選を求め、その実現を同国に対する経済制裁解除の条件とした。18日付G1サイトなど(1)(2)(3)(4)(5)が報じている。
17日の会合はルーラ大統領とフランスのマクロン大統領、アルゼンチンのフェルナンデス大統領、コロンビアのペトロ大統領の他、ベネズエラのデルシー・ロドリゲス副大統領、同国野党のリーダー格で弁護士のジェラルド・ブリデ氏が参加して行われた。
この会合はブリュッセルで開催中だった欧州連合(EU)27カ国とラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)33カ国の共同首脳会議の合間を縫って開催された。
この会合で話された内容は翌18日に発表された。それによると、「2024年にベネズエラで行われる大統領選は国際的な監視機関の監視下で自由な環境の中で行われることを義務付ける」とした上で、「この選挙が自由で公正なものと判断された場合に限り、現在、同国に課せられている国際的な制裁を解除できる」とした。
この声明には、「ベネズエラからの代表が野党側に寄り過ぎた内容であると抗議したため、第一草案は取り下げられた」とのただし書きも付されていた。
マクロン大統領は声明発表後の取材に応じ、「ベネズエラ問題については長時間話し合った。今回の会議で最も大切な課題だったと思っている」とも語っている。
べネズエラではチャベス政権時から独裁色が強かったが、2013年にマドゥーロ政権が成立して以降は特に非民主主義的な独裁状態が続き、国際的な問題となっている。同国に対する制裁は2014年に起きた全国的な抗議活動の最中に、当時の野党のリーダー的存在だったレオポルド・ロペス氏が逮捕令状も出されないまま逮捕された頃から行われ始めている。
2015年の国民議会選挙では野党側が与党側に2倍近くの大差で圧勝したものの、マドゥーロ政権は2017年に国民議会と並行した形でマドゥーロ氏に近い人脈で構成した制憲議会を発足させ、国民議会を形骸化した。これにより経済制裁は悪化し、同国は国際的に孤立した。
その後に行われた2018年の大統領選、2020年の国民議会選は、民主的に行われたかが疑わしいまま与党側が圧勝した。
ただ、2021年に行われた統一地方選ではEUの大使が選挙を監視。その結果、「司法の独立性は認められないが、以前の選挙より改善は見られた」との報告が行われた。
ベネズエラの大統領選は2024年に行われるが、野党側は既に一部の有力候補者が公職につくことを禁じられ、被選挙権を剥奪されるなどの非民主的行為が与党側によって行われていることを主張している。
野党側は独自の予備選を10月に行うが、その中には2012、13年の大統領選次点のエンリケ・カプリレス氏ら、公職に就くことを禁止された候補者3人も含まれている。
同首脳会議の共同声明では、ロシアへの言及を避けつつウクライナ侵攻を批判した他、ラ米諸国への投資やデンマークによるアマゾン基金への寄付、ベネズエラの大統領選に言及した。
なお、ルーラ大統領は同期間中、7回の2カ国間会合も行った。