リオ市=苛立つ患者が当直医に暴行=医師1人に急患60人の現実

暴行を受けたサンドラ医師(17日付メトロポレサイトの記事の一部)
暴行を受けたサンドラ医師(17日付メトロポレサイトの記事の一部)

 リオ市イラジャ区にある市立フランシスコ・ダ・シルヴァ・テレス病院で16日、当直の女性医師が父娘から暴行される事件が起こった。
 17日付けメトロポレサイトなど(1)(2)によると、午前3時30分頃、父のアンドレ・ソアレス容疑者(48)と娘のサマラ・ソアレス容疑者(23)が同院を訪れた。アンドレ容疑者は左手の指に軽傷を負っており、優先対応するように求めたが、職員らは他に重篤患者がいるとして、待機するよう指示した。
 到着時から既に興奮状態だった二人は待たされてイライラした様子だったという。
 二人はその後、病院側の対応を不服として暴れ始め、挙句の果てにドアや窓ガラスなどを破壊。騒ぎに気が付いて様子を見に来た当直医のサンドラ・ルシア・ブイヤー・ロドリゲス医師にも殴る蹴るの暴行を加えた。
 口の中を5針縫う大怪我を負った同女医は、自身のSNSで以下のように述べている。「私にはリオ市の保健分野で30年以上の経験があり、誇りを持っているが、あの朝、私は医療従者が抱える不安ともろさの犠牲になった。警備体制が不十分な中、話を聞こうともしない男性に身体的暴行を受けた」。
 リオ市保健局によると、同院には合計154人の医師が在籍し、そのうち55人が緊急事態に対応するが、サンドラ医師はこの日、1人で患者の対応に追われていた。
 当日はもう一人の医師も当直予定だったが、健康上の問題を理由に欠勤していたという。「口の中を5針縫う怪我に、打撲、擦り傷。その上、警察や警察署、法医学研究所まで巻き込んだ。これらすべては、60人以上の入院患者を1人で担当させた結果だ」と同医師は主張する。
 警察によると、容疑者2人は重篤な患者が収容されている「赤い病室」にも侵入。入院患者らを恐怖の渦に巻き込んだ。心筋梗塞の患者の中には点滴をつけたまま部屋から逃げ、トイレに隠れた人もいたという。
 被害者はそれだけではない。混乱の中で然るべき手当が受けられず、重篤な状態にあった82歳の女性が死亡した。アンドレ容疑者らは器物損壊と傷害罪で現行犯逮捕されたが、これにより、殺人罪にも問われることになった。
 この事件は医療現場の人手不足の問題を浮き彫りにし、医師らの安全確保のために各医療機関の警備を強化する必要性を改めて露呈した。

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