ここ最近のブラジルサッカー界での明るいニュースといえば、ヴィトール・ロッケのバルセロナSC(バルサ)との契約成立だ。
ロッケはまだまだ国際的な知名度は低いかもしれないが、ここ最近のブラジル若手選手の中ではとりわけ楽しみな存在の一人だ。
ロッケは昨年のリベルタドーレス杯で、2002年W杯優勝監督のフェリポン氏の大抜擢により、アトレチコ・パラナエンセのセンターフォワードとして先発し、いきなり得点を決めた。これを機にコラム子を含むサッカーファンから一躍注目を集めたが、今年に入ってさらに成長。国内リーグの全国選手権ではここまで14試合に出場して8得点。18歳にして得点王ランキング堂々の2位につけている。
若き日のネイマール以降、ブラジルの様々な有望株を見てきたが、ロッケの「得点への意識の高さ」はトップクラスだ。
ロッケは相手ディフェンダーが押し倒そうとしてきても倒れず、ゴールに向い続ける姿勢を崩さない。ディフェンダーの間隙をスッと縫って入り込み、一瞬にして得点を決めるポジショニングの良さもある。これらは通常、肉体と試合勘が育っていないとできないはずのプレーだ。わずか18歳にしてできていることにとにかく感心する。
思えば、この「得点へのこだわり」こそ、この10年のブラジル選手に足りなかったものだ。
ネイマールがどうしてもクリスチアーノ・ロナウドやメッシを超える選手になれなかった理由の一つに、彼らほど得点を稼ぐことができなかったことが挙げられる。
ガブリエル・ジェズスもセンターフォワードとして早くから出世したが、守備面の技術的評価は高いが得点数は物足りなかった。
現在のレアル・マドリッドの若き主力ヴィニシウス・ジュニオルやロドリゴは順調に成長を遂げているが、エンバペ(PSG)やハーランド(マンチェスター・シティ)などの驚異的な得点力を持つ選手と比べると、印象としてどうしても見劣りがちになってしまう。
それだけにロッケの名門バルサ入りは嬉しかった。ここまで華のある有望選手がセンターフォワードとしてバルサに行くのは怪童ロナウド以来。期待は高まるばかりだ。
奇しくもバルサの永遠のライバル、レアル・マドリッドには21日に17歳に成ったばかりの神童エンドリックが契約を決めている。エンドリックも16歳の時点で選手層の厚いパルメイラスで4得点を決めるなど順調に成長中だ。将来、バルサとレアルの二大名門のセンターフォワードがブラジル人で独占される姿を夢見たい。
ロッケのバルサでのプレーは2024年からになるが、その前にブラジルで得点王となって、バルサに大きな手土産を持参したいところだ。(陽)