サンパウロ州警察、軍警殺害に全面報復か=銃撃戦等の死者13人も=人権相が殺害増を問題視

タルシジオ・サンパウロ州知事(Marcelo Camargo/Agencia Brasil)
タルシジオ・サンパウロ州知事(Marcelo Camargo/Agencia Brasil)

 【既報関連】7月27日に起きたサンパウロ州グアルジャーでの軍警殺害事件を受けて始まった、軍警、市警の合同捜査「エスクード作戦」で多くの死者が出ていることに関し、否定派、肯定派による反響が大きなものとなっている。7月31日付フォーリャ紙(1)などが報じている。
 今回の作戦は、軍警特別部隊(ROTA)のパトリキ・レイス氏が7月27日夜、パトロール中に殺害された事件を受け、7月28日に始まり、30日には殺害犯が捕まった。
 タルシジオ・デ・フレイタス・サンパウロ州知事は翌31日に記者会見を行い、この時点で8人の犠牲者が出ていたことに関し、「対立は避けたかったが、相手が敵意を見せたので仕方がなかった」と釈明していた。
 だが、今回は同作戦に関して、近隣住民から「発表よりもっと多くの人が死んだ」「警察による拷問行為も起きた」「警察は60人位殺すと言った」などの証言が続出。7月31日付G1サイトなど(2)(3)によると、粛清が疑われる証言や警官が夫を家から引きずり出し、抱いていた赤子を引きはがして銃殺したといった妻の証言は1日も続いている。
 サンパウロ州ではタルシジオ知事の政権となって以来、警察による死者が増加している。サンパウロ州保安局が7月31日に発表した上半期のデータでも、軍察による死者の数が昨年上半期の126人から155人にと26%増え、市警による殺人は60%増えたと報告されている。
 そうした中で、今回のグアルジャーでの一件が起こったことを懸念する声が強まっている。中でも目立っているのはシルヴィオ・アルメイダ人権相の反応だ。7月31日付G1サイト(4)によると、同相は31日に、今回の件を全国人権諮問委員会にかけ、調査を行う意向を表明。「この国には警察による暴力行為に関する規制が必要だ。こうした行為には限界があり、それを守ることが人権保護につながる」と同相は語っている。
 他方、7月31日付フォーリャ紙サイト(5)によると、グアルジャーでの事件後、タルシジオ知事の支持母体であるサンパウロ州議会の保守派議員の間で、一部の軍警が装着している制服胸部のカメラ廃止を求める声が再燃している。
 このカメラは警官による暴力を抑止する目的で導入され、実際にこれによって警官による殺人、暴行事件が減るなどの効果が出ているが、タルシジオ知事は昨年の知事選のキャンペーン中、カメラの装着廃止を公約として掲げていた。だが、それに対しては州民からの反対の声が強く、専門家の意見を聞いてから判断することにしたという経緯があった。
 カメラ装着廃止派の一例はジル・ジニス州議(自由党・PL)で、7月27日に「警官による暴力を案じて制服へのカメラ装着だけを考える市民がいるが、本当の犯罪者が一般社会を脅かし、秩序を守る市民が非武装となってしまう」とSNSで語っている。
 1日付G1サイトなど(6)(7)によると、エスクード作戦による死者は1日昼過ぎの段階で13人となったという。1日にサントス市で軍警1人がマシンガンで撃たれた事件を受け、作戦の範囲が同市まで拡大。1日の事件の容疑者も1人死亡したが、先の数字がこの1人を含むかは明白ではない。

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