最高裁=不貞理由の女性殺人を犯罪に=中世的男性優位論に違憲判決

最高裁大法廷の様子(Foto: Carlos Moura/SCO/STF)
最高裁大法廷の様子(Foto: Carlos Moura/SCO/STF)

 最高裁判所(STF)は1日、女性殺人における「名誉の正当防衛」論の使用は違憲であるとの判決を全会一致で下した。同日付テラサイトなど(1)(2)が報じている。
 「名誉の正当防衛」論は、女性殺人や女性への暴力事件において、被告人の行動を正当化するために使用されていた。例えば、女性が不倫などの不貞行為を犯した場合、被告人の名誉が侵害されたとする状況下では暴力行為や殺人が許容されるとする考えだ。
 これを問題視したPDT(労働者民主党)が2021年1月に訴訟を起こし、この慣行に基づいた被告人の無罪判決は「有害で恐ろしい、時代遅れのもの」であると主張していた。
 ブラジルの法律にはかつて、女性に対する暴力を容認する規定が設けられていた。この理論は1605年頃から正当化され始め、1940年には刑法からは姿を消した。だが今も、被告の無罪を主張するために弁護人によって使用され続けている。
 この判決に従い、弁護士、警察官、裁判官は「名誉の正当防衛」の主張を使用することが禁止される。この判決は事件の捜査段階と陪審裁判に至る全ての場面で適用される。加えて弁護側は、「名誉の正当防衛」の主張を用いることができなくなり、後に同じ主張を根拠にして陪審員裁判の取り消しを求めることも禁止される。つまり、相手が女性であるために起こした殺害や暴行事件の被告人は今後、この主張による恩恵を受けることができなくなる。
 カルメン・ルシア判事は、「名誉の正当防衛」の主張は民主的な社会の原則に相反するものと強調。「人間の尊厳を第一とする、民主的で、自由で、公正で、なおかつ連帯感のある社会において、過去の中世的で非人間的な慣習を復活させる余地はない」とし、「家父長制のイデオロギー」に基づく社会の形成が、さらに「名誉」という概念を強調し、「女性の命の排除の正当化」につながったと指摘した。

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