広島原爆78周年慰霊法要=当地被爆者協会資料を母県で展示

広島原爆78周年慰霊法要に参列した皆さん

 ブラジル広島文化センター(重田エルゾ会長)は6日午前8時15分、サンパウロ市の南米浄土真宗本願寺(西本願寺)で「広島原爆78周年慰霊法要」を執り行い、被爆者の盆子原国彦さん、渡辺淳子さん、金子ユフさんらも含めて約30人が参列した。法要の様子は西本願寺のユーチューブで生中継され、当日の様子はユーチューブ(https://www.youtube.com/watch?v=5kqiVJS02No)で視聴できる。

 広島に原爆が投下された8時15分ぴったりに鐘が鳴らされ、犠牲者に黙祷が捧げられた。ブラジル別院の梶原マリオ輪番ら3人が読経する中、参列者が順番に焼香した。
 梶原輪番は法話の中で「世界に戦争のなかったことはなく、現在もロシアやアフリカ各地で抗争が続く。原爆が落とされ、罪もない多数の市民が犠牲になった。仏陀が残した平和の教えを今こそ思い返さないといけない」と説き、「私の祖父も広島県地方部出身。彼が戦前に移住していなかったら、今の私の生活もない」と語った。
 松井一實(かずみ)広島市長から送られた「78年前の夏、何の前触れもなく人類に向け初めてとなる原子爆弾が投下され、地上600mでさく裂した後に生じた凄まじい熱戦と爆風は罪のない多くの尊い命を奪い、これまでの日常を地獄絵図に一変させました。そして心身に悪影響を及ぼす放射線は、今なお被爆者に生活面で様々な苦しみを与え続けています」との挨拶文が小池庸夫理事によって代読された。
 さらに湯崎英彦広島県知事からも「ロシアによるウクライナ侵略の長期化と、その中で繰り返し行われる核兵器による威嚇、また北朝鮮による度重なるミサイル発射など、国際情勢が一段と厳しさを増していく中、5月にG7広島サミットが開催されました。G7をはじめ招待国の首脳が、平和記念公園を訪れ、史料館を見学されると共に、被爆者との対話などを通して、被爆の実相に触れられました。(中略)大変意義深いことであったと受け止めております」とのメッセージが届き、伊東伸幸理事が代読した。
 重田会長も「世界的な悲劇が広島に起きた。知事や市長の言葉にある通り、日本はこの悲劇が再び起きないように世界を引っ張る責任がある。我々もできる限りそれを支援していく」との決意を述べ、参列者に感謝のメッセージを送った。
 法要の後、渡辺淳子さん(80歳、広島市出身)に取材すると、「G7で各国首脳が原爆資料館を見学したことで心に訴えるものがあったはず。すぐに政策に反映される訳ではないだろうが、将来に影響を与えると信じる」と述べた。また当地被爆者の健康相談を担ってきた広島県医師会が、20年末に解散したブラジル被爆者平和協会の資料を譲り受け、広島県医師会館で6日からその一部の展示を始めたことを伝えた。

金子ユフさん

 当日、1歳で被爆した金子ユフさん(ゆう、79歳、広島市出身)も出席。「あの日の朝、母と子供6人で爆心地から2キロ地点で被爆した。小さかったから何も覚えていない。でも兄の一人がたまたま爆発時に家の外に遊びに行っていて居なくなってしまった。母は『絶対に生きている』と血眼になって探し、ようやく1週間後に別の避難所にいるのを見つけた。結果的に6人とも生きていた…。今思えば奇跡だった。核兵器の悲劇を繰り返さないよう毎年法要に参加しています」としみじみ語った。

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