南米エクアドルの大統領候補フェルナンド・ビジャビセンシオ氏(59)が9日、首都キトでの選挙活動中に暗殺され、大きな波紋が広がっている。10日付G1サイトなど(1)(2)(3)(4)が報じている。
同氏は選挙演説を終え、会場の学校を離れようとして車に乗り込んでいた時に襲われ、頭部に3発の銃撃を受けた。調べによると、犯人3人が機関銃を乱射し、下院議員候補者と警察官2人を含む9人が負傷した。容疑者のうち1人は警察との銃撃戦の後に死亡しており、事件への関与が疑われる6人が逮捕された。
ビジャビセンシオ氏はエクアドル中部の都市アラウシで生まれ、調査報道を得意とするジャーナリストかつ政治家としてキャリアを築く一方、組合活動にも加わるなど、精力的に活動していた。
政治学者のマウリシオ・サントラ氏は、ジャーナリストとしての同氏の仕事について、麻薬密売とエリート政治家の腐敗に関わる告発に焦点を当てていたと説明し、「彼は多くの権力者の利益に干渉した」と説明する。21年から23年5月までは連邦議員を務め、自らを先住民の社会的大義と労働者の擁護者であると宣言していた。8日に発表された選挙の世論調査の一つでは同氏は8人中5位につけていた。
同氏は犯罪組織から脅迫を受けていたことを告発していたが、自身の選挙集会では防弾チョッキを着用することを拒否していた。事件後には同国で2番目の規模とされる犯罪組織が自分達の犯行との声明を出し、同氏が約束を果たさなかったからと説明したという。
同国の最高選挙機関である国家選挙審議会(CNE)は、このような暴力行為が選挙と民主主義を汚すものであると非難した。
ギジェルモ・ラッソ大統領は10日未明、エスタード・デ・エセソン(例外状態、市民の権利が大きく制限された非常事態の一種)を宣言すると同時に、大統領選の一次投票は予定通り8月20日に実施すると発表した。例外状態の有効期限は60日間で、警察の活動を支援するために軍隊が街頭に出ることも許可している。
ラッソ大統領によると、この措置は「国民の安全、国の平穏、そして8月20日の自由で民主的な選挙」のために採られたものであるという。エクアドル政府はビリャビセンシオ氏を追悼して、3日間の服喪を宣言した。