ビザ免除措置=「両国関係強化への大きな一歩」=駐ブラジル林大使インタビュー

本紙オンライン取材に答える林大使

 ブラジル外務省は9日午後5時、日本とブラジル両国政府が、両国の一般旅券所持者に対し、90日以内の訪問である場合は、ビザの取得義務を相互に免除することで合意したと発表した。同措置に関する詳細を林禎二駐ブラジル日本国大使に聞いた。

 今回の免除措置により、これまで観光ビザ申請などでも必要だった銀行口座の残高証明や旅程提示などの手続きが不要になり、両国を行き来する際には、航空券を購入すればよいだけになった。免除措置は、観光目的をはじめとして、両国へ渡る際に必要とされる全ての短期滞在(ただし、就労目的は除く)についてのビザが対象となっている。
 林大使は今回の免除措置が両国の観光活性化、学生や研修生、ビジネス分野における人材交流、経済発展に大きく寄与すると述べ、「両国の関係強化への大きな一歩。一方的ではなく双方的であることが重要」と語った。
 前政権時代にブラジル政府は、日本やアメリカ、カナダ、オーストラリアなどに対して一方的な観光ビザ免除措置を行ったが、現政権は国家間の互恵主義、平等待遇の原則に基づく外交方針を採用し、一方的な観光ビザ免除措置の撤回意向を示していた。
 そうした中、5月のG7広島サミットにルーラ大統領が参加した際、岸田文雄首相がブラジル人への短期滞在査証免除措置の導入意向を発表し、ブラジル政府も日本人に対して同様の免除措置をとる方針となった。
 コロナ禍前の2019年に日本を訪問したブラジル人は約5万人。同年の総外国人観光客数3200万人の0・2%にあたる。林大使は「ビザ免除は観光客増加を促進するために非常に重要な措置。約1億2千万人の人口をもつメキシコは同年に約7万人が日本を訪れている。日本文化が広く普及しているブラジルなら今後は5万人を上回るのでは」と語った。
 また、メキシコとブラジルでは日系進出企業数に大きな開きがある。メキシコには中南米最多の約1300社が進出しているが、ブラジルは約650社だ。林大使は「ビジネスには対面での交渉が非常に重要になる場面がある。ビザ免除によりビジネスマンの往来が容易になれば、企業活動も広がる可能性が十分にある」と述べた。
 また、日本に暮らすブラジル人の人数は現在、約21万人とされており、今回の免除措置により、日本とブラジルで離れて暮らすブラジル人家族の交流機会増加が期待されている。

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