15日に就任したパラグアイのサンチアゴ・ペーニャ新大統領が、150年以上前に起きた戦争で略奪された戦利品の返還について、ブラジルと交渉する意向を表明していると14日付ドイツ国営通信ドイチェ・ヴェレ(1)が報じている。
ブラジルとパラグアイ間で続く論争の一つに「エル・クリスティアーノ(聖なるもの)」と呼ばれる大砲がある。これはパラグアイ各地の教会の鐘を溶かして作られ、パラグアイ戦争で伯軍に対して使用されたものだ。パラグアイ人にとって、それは国のために戦う国民の団結を表している。
パラグアイ戦争(1864―1870年)はパラグアイ対、アルゼンチン・ブラジル帝国・ウルグアイの三国同盟軍との間で行なわれ、ラテンアメリカ史上最も凄惨な武力衝突となった。パラグアイにとって致命傷になったのは、1865年にイギリスの影響下でアルゼンチン・ブラジル・ウルグアイの三国同盟が結ばれたことだ。
開戦前にいたパラグアイ人52万5千人のうち、生き残ったのはわずか21万1009人。どの統計数値を見てもこの戦争でパラグアイ人の半分以上が死亡した。
戦争終結後、伯軍はこの大砲を没収して戦利品として持ち帰った。現在はリオ市にある国立歴史博物館に展示されている。それから153年経った今、ペーニャ大統領はこの大砲を含む品々の返還に興味を示し、ルーラ大統領と協議して返還について話し合う意向を表明した。
パラグアイがブラジルに返還を求めている文化財の一部は既に返還されたが、大砲に関しては意見が分かれている。一部では、返還することで歴史的公正が実現すると考える人もいれば、歴史的記憶として保管されるべきだと主張する人もいる。
国際的な法的義務はないため、返還には国内法や政治的な意志が影響を与える要因となる。専門家によると、問題は過去よりも現在と未来に関わるものだ。歴史的、文化的、法的、政治的な側面が絡み合って返還は容易ではないが、今後の中南米諸国の連帯と協力を考える上で重要な議論となると報じられている。