様々な事情で亡くなった遺体が放置された現場をキレイにする「特殊清掃業務」に携わる1人の女性クリシア・ムレさん(32)の壮絶体験が8月30日付のUOLサイト(1)で紹介されている。
連絡が取れないまま数日後に遺体で発見された人、賊に自宅に侵入された後に殺人の犠牲となった人など、現場には大量の血が残されており、争いがあった事を物語っている。
クリシアさんは「腐乱死体、殺人や自殺による遺体、残留物、消毒や消臭などあらゆるケースに対処する清掃の訓練を受けてきた。人体に影響をもたらすウイルスや細菌などの生物学的リスクがあるところに出動する」と説明する。
彼女はサンパウロ市の特殊清掃を専門とする業社「ビオデコン」に2019年から勤める。それまで8年間美容師として働き、フライトアテンダントになるためのコースも受講したがその分野には進まず、手術器具の修理や医療機関の消毒を行う父親の会社で働くようになった。
家族の1人が死亡し、数日間遺体が放置されていたことをきっかけに、特殊清掃に関心を持ち米国で専門コースを受講した。
死後処理はほとんどの場合、死者の親族か住居の管理人から依頼される。清掃、消毒、消臭を含めて4千レアル(約12万円)から請け負う。だが、遺体の安置時間や家の床の種類などによって料金は異なる。
人体腐敗が始まるのは2、3日後で、体液が出ることは珍しくない。事件の状況によっては死体の一部が数メートル離れた場所や別の部屋で発見されることも。「臭いを表現するのは難しいが、動物の死体よりもひどい。当人が薬を服用していた場合は、強烈な臭いがする」と説明する。
現場には少なくとも二人以上で赴き、作業完了するまでに10時間かかる場合もある。掃除を依頼した家族にトラウマを与えないよう作業は入念に行う。
感染リスクがあるため、彼女は清掃時には防護服に手袋、ガスマスクを着用する。廃棄物は病院のそれと同様、一般ゴミとして処理できず、感染性廃棄物の焼却を専門とする業者に依頼する。この種の廃棄物は可能な限り封じ込めなければならない。消毒薬も市販のものとは違う病院向けの製品を使用するとのこと。
掃除を難しくする要因がいくつかあると彼女は説明する。フローリングの床の場合は血液を吸収しやすく、いくら掃除しても落ちないため、染みた木材を取り除く必要がある。マットレスや布張りなどの家具、床に落ちている衣類も同様とのこと。
クリシアさんはこれまで、様々な過酷な場面に立ち会ってきたが、遺品整理で写真を見るときに人生に対して色々と考えさせられるという。家族や友人との幸せな瞬間が写っており、人生経験や思い出があり、それを奪う権利は誰にもないのだと。