南米ペルーで最も有名な遺跡といえば「マチュピチュ」の名前が挙がるだろう。この古代インカ帝国の城塞遺跡はペルーの象徴であり、世界中から毎年何十万人もの観光客が訪れる。
実はペルー国内にはこの種の遺跡が他にもあり、クスコ県の「チョケキラオ(Choquequirao)」も同種の遺跡だ。だがアクセスの悪さもあってマチュピチュほど知られておらず、隠れた名所になっている。
ケチュア語で「黄金のゆりかご」を意味するチョケキラオ遺跡は、しばしば「もう一つのマチュピチュ」「インカ帝国最後の砦」とも称され、近年人気を高めつつある。
チョケキラオはおおよそ1450年に建設され、インカ文明を調査する専門家は、同遺跡の役割については不明確まま。だが宗教的要素が含まれている可能性があると見られている。この遺跡はインカ帝国がスペイン征服者に対抗する最後の砦の1つであった可能性もあるとみている。
マチュピチュは観光地化され、比較的簡単にアクセスできるが、チョケキラオは冒険心旺盛な旅行者にとっては、より興味を掻き立てる場所となっている。9日付BBCなど(1)(2)がその魅力を紹介している。
アンデス高地の人里離れた地域にあるチョケキラオ遺跡を訪れるには、時間と労力が必要だ。アクセスは非常に困難で、まずクスコ県まで空路で移動し、そこからカプリヨックという町まで数時間の陸路移動、そして最低でも2〜3日の徒歩移動が必要だ。
体力もさることながら精神的な準備も必須で、標高3千メートル以上のクスコの山岳地帯をひたすら歩くことになるため非常に寒く、高山病対策も重要だ。昇降が激しい過酷な地形、途中にはだかる川や雪山などの障害もあるため、ハイキング愛好家にとってはむしろ魅力的なルートとなっているほどだ。
地元住民が遺跡へのガイドや装備搬送のサービスを提供している。困難な道のりを経てチョケキラオを訪れた人々は決まって、その努力が報われると証言し、手付かずの自然や静寂に魅了されたと感想を述べている。
遺跡は長らく放置されていたが、1993年に考古学グループによる発掘作業が始まり、多くの建築物が保存された。チョケキラオ周辺の観光業はまだ小規模で地元住民によって細々と運営されている。観光誘致が進められ、現在はケーブルカーの建設計画が進行中だが、地元コミュニティ間では論争が起こっている。
同計画は観光業を促進し、地域経済活性化の可能性があるものの、住民の合意が得られず衝突が起こり、挙句にクスコ県知事からも反対表明を受け、なかなか進展に至っていない。