現代沖縄演劇団体による本場の極上琉球劇コメディー「五月九月(ぐんぐぁちくんぐぁち)」が10日、サンパウロ市リベルダーデ区の沖縄県人会館で2回上演された。本公演は、ブラジル沖縄県人移民115周年と日・ペルー外交関係樹立150周年を記念して実現した。昼と夜の2部に分けて行われた公演は共に本部講堂が一杯になり、1千人以上が来場した。中には感動のあまり2回続けて観劇する客まで。会場は終始熱気に溢れ、観客の笑いが絶えない公演となった。劇中にはポルトガル語を使うシーンもあり、客を大いに湧かせた。
薩摩藩と清への両属体制を取りながらも独立した王国として存在し、両国の文化の影響を受けつつ独自の文化を築き上げた沖縄。国際感覚あふれる当時の琉球王朝の外交の様子を、喜劇として演劇化した。同作品は、沖縄の作品として初めて文化庁芸術祭(2019年度)の大衆芸能部門で大賞を受賞した作品だ。
公演終了後に来場者にコメントを尋ねると、比嘉トシさん(87歳、沖縄県)は「演劇を見ながら、終戦の時のことを思い出した。私はひめゆりの塔がある島尻の生まれ。終戦間際にやっぱりガマ(洞窟)に隠れていて、米軍から投降を呼びかけられて、こわごわと白旗を持って出て行った。その後は米軍基地で4年間ほど家政婦として働いたのに、あの当時は労働契約や年金など何にもなかったのよ」と劇を見ながら米国と自分の生い立ちに想いを馳せた。
ブラジル人空手教師キューデリーさん(32歳)は、「素晴らしかった。ブラジルの舞台と違って、伝統音楽の生演奏と役者の演技が同時に演じられていて興味深かった。それに、こういった歴史を知ることはとても大切だ」と絶賛した。
ローザ・エミ・キシモトさん(68歳)は、「伝統的で古典的な踊りだけでなく、現代の踊りも混ざっていてとても見ごたえがあった。劇中は笑わずにはいられなかった」と笑顔で語った。
演劇関係で今まで4度ブラジル訪問した経験がある脚本・演出家の富田めぐみさんは、沖縄とブラジルの強い絆について「ブラジルは本当に温かい。毎回来る度に沖縄を絶対に離さないぞ!手の中で握っておくんだという強い想いを感じます。沖縄に住んでいると当たり前で、琉球文化の有難さを忘れてしまうことがありますが、ブラジルの沖縄移民がキラキラした目で琉球の唄や踊りを演じているところを見ると、一緒に沖縄の文化を紡いでいくんだという気持ちになる」と当地の活動を大絶賛した。
更に「今回の作品は、大国や権力などによって歴史的に翻弄されてきた琉球人が、唄や踊りでポジティブに生き抜いてきた姿や強さを表現しようと思っています。移民の皆さんも涙や汗を流してきたと思いますが、やっぱりその苦労を笑顔とポジティブなエネルギーで乗り越えてきたのではと尊敬しています」と敬意を表した。