南米並びにスペイン語圏最大の音楽の祭典「ラテン・グラミー」のノミネート発表が19日に行われたが、ブラジル勢はまた蚊帳の外の結果となった。
スペイン語の音楽はとりわけここ10数年、南米人の米国移住増加に伴い飛躍的にその需要を高めている。
スポティファイをはじめとする音楽配信プラットフォームは国境を越えた音楽の聴取を可能にし、スペイン語音楽は聴取数を集計した「グローバル・チャート」を通じて、世界で圧倒的に聞かれている音楽としてその存在感を強めている。
とりわけ近年は、レゲトンの大流行もあって、人気に拍車がかかっている。
そこへ行くとブラジルは、ラ米では唯一のポルトガル語国ということがネックとなり、国際戦略上、極めて苦戦している。このラテン・グラミーでも中心になるのはいつもプエルトリコ、メキシコ、コロンビア、スペインのアーティストで、ブラジル勢は「ポルトガル語音楽部門」のみに追いやられているのが現状だ。
ただ、今回の状況は必ずしも「ブラジル音楽界の弱さのせい」だけが原因とは言えない。なぜなら、今年のノミネートを見ると、最近のブラジルの期待の若手がまるで選出されていないからだ。
ブラジル期待の若手の一人、以前このコラムでも紹介した女性歌手マリーナ・セナは今回、ノミネートから漏れたことに関して「所属のレコード会社が私を押してくれなかった」と強い不満を述べている。
彼女と言えば、ガル・コスタやマリーザ・モンチといった国際的に有名なブラジル女性アーティストたちと比較されるような存在であり、こうした批評的な音楽祭には向いてるタイプだとコラム子も思う。
マリーナ・セナに並ぶ男性注目株には、JAOという27歳のポップ・ロック歌手がおり、その台頭は著しい。しかし、彼もノミネートされていない。
JAOの国内人気は現在急上昇中で、サッカースタジアムでのコンサートチケットは即完売。国内屈指の人気となっている。マリーナと彼は、ロラパルーザなど、国際的音楽フェスティバルに足を運ぶうるさ型の音楽ファンから最も熱い支持を受けている。ブラジル音楽業界には将来のことも考えて、彼らを国際的にアピールしてほしいところだ。
こうした一方で良い兆しもある。今回のラテン・グラミーにこそノミネートされなかったが、国際的にブレイクしつつあるブラジルの女性歌手アニッタが有名音楽チャンネル「MTV」のビデオ・ミュージック・アワードで最優秀ラテン・アーティストを受賞したのだ。
アニッタは同アワード授賞式で新曲を披露する機会を得、彼女の歌うジャンル「ファンキ」が「レゲトンの次に流行るサウンド」として注目を集め始めた。これを皮切りにブラジル勢の世界的な活躍が期待される。(陽)