ポルトガル語圏の遺児学生にブラジルへの留学支援事業を行うNPO団体「あしながブラジル」(アンドリュー・カストロ事務局長)は11日、サンパウロ市の同事務所にて、日本のNGO団体「あしなが育英会」が実施する短期留学プログラム「レインボープロジェクト」の参加者体験報告会を行った。
あしながブラジルは、日本のあしなが育英会のブラジル支部として2019年に発足。ポルトガル語圏のアンゴラ、モザンビーク、サントメプリンシペ、ギニアビサウ、カーボベルデの様々な理由で親を亡くした遺児学生を対象に、教育機会を与える奨学金プログラムを実施している。
あしながブラジルが行う奨学プログラムは、5年間にわたって実施される。始めにウガンダで11カ月間、学問やブラジルでの生活の仕方を学び、ブラジルへ。ENEⅯなどの大学入試を受け、大学生活を送る。これまでに15人の留学生を受け入れ、5人が大学を卒業。ブラジルで働いている者もいる。応募者は年々増加しており、来年は13人の奨学生を受け入れる予定。
レインボープロジェクトは、日本のあしなが奨学生と世界各国の学生が交流を行う事業。参加国はインドネシア、トルコ、アメリカ合衆国、ブラジル。今年初めて日伯間で交換留学が行われた。
今回の交換留学には、ブラジルからゼルビーニ・ペドロさん(19歳・ベラス・アート大学)、日本から近藤総司さん(22歳・中央大学)が参加した。
報告会では、ペドロさんが体験報告を行った。ペドロさんは日本に16日間滞在。あしなが育英会の寮「心塾」(東京都日野市)を拠点にあしなが奨学生と交流し、互いの経験や文化を共有した。仙台市や石巻市など東日本大震災の被災地も訪ねた。
ペドロさんはプログラムへの参加経緯について、自身の家族が日本の新興宗教「世界救世教」の会員だったことから、日本文化に触れて育ち、日本文化の中でも芸術分野をより知りたいという気持ちから応募したと語った。
ペドロさんは留学体験を振り返り、「日本では重大な災害などが起きた時、再び同様の悲劇が起こることを防ぐため、被災物などをそのままの形で残します。留学ではそうした日本の次世代に語り継いでいく文化を実感しました。また、アフリカからの留学生とも交流し、彼らが自分たちの国に貢献したいと強く思っていることを知り、僕も芸術を通して人助けをしたいと志すようになりました」と語った。
カストロ代表は、「ペドロさんは積極的に沢山の文化交流を行っていて素晴らしいと思いました。今後は伯国からのレインボープロジェクトの参加人数を増やしていきたいと考えています」と話した。
この日、近藤さんは聴講者として参加。近藤さんはブラジルに5週間滞在し、サンパウロ市の日本文化広報施設「ジャパンハウス」でのインターンや、ESPM大学の授業参加、日本の大学でオーケストラサークルのコンサートマスターをしていることから、サンタマルセリーナ音楽大学でバイオリン演奏などの活動を行った。
日本では大学に通う為、あしなが育英会から奨学金をもらい、同会の募金活動などに参加してきたという。
近藤さんは「ジャパンハウスの研修では、一般に認知度の低い文化を扱ったイベントの際には、参加者が少ないこともありますが、それでも継続して広報活動を続けていくことが大事であることを学びました。来年から働く就職先で活かせそうです」と語った。