チリの太陽熱調理レストラン=「他に類をみない独特な風味」

太陽光を集めてやかんのお湯を沸かす様子(https://www.facebook.com/reel/929528748217284)
太陽光を集めてやかんのお湯を沸かす様子(https://www.facebook.com/reel/929528748217284)
ソーラーキッチンの様子(Foto: Divulgação Facebook)
ソーラーキッチンの様子(Foto: Divulgação Facebook)

 南米チリの北部、エルキ渓谷に位置するレストラン「デリシアス・デル・ソル(太陽の恵み)」は、太陽熱調理という画期的な方法で関心を引く。1999年以来、ここでは太陽エネルギーだけで料理を作り、安価で持続可能なクリーンエネルギー利用を徹底。その先駆者的な取り組みを、27日付テラサイト(1)(2)が紹介している。
 入り口にはガラス蓋のついた不思議な箱が数多く出迎える。これがオーブンの役割を果たし、横に並んだパラボラアンテナが太陽の光を直接鍋に反射させ、コンロとして機能する。自慢のソーラーキッチンだ。
 準備は毎日午前9時に開始されるが、調理に要する時間は季節や日照状況によって異なる。ソーラーキッチンの温度は180度にも達するため、夏場は必然的に調理スピードがアップする。独自の調理技術に加え、同レストランはヤギ肉やヤギのチーズなど、地元の有機食材を積極的に使用することでも有名だ。
 火加減を調整することも可能で、ガラスで覆われた箱の中で肉を入れると、約4時間でジューシーに焼き上がり、フォークでホロホロと崩れるほど柔らかくなる。パンが焼きあがるには1時間程度、米は約40分で炊ける。太陽の下で調理することで、他に類を見ない独特な風味が生まれるのだという。
 この取り組みは90年代、地域の貧困と闘うことを目的に、エルキ渓谷のソーラーポテンシャルに着眼したチリ大学の栄養・食品技術研究所による社会プロジェクトとして開始された。同地域は地球上で最も日射量が多いとされる。地域農家に対し、持続可能なエネルギー源として太陽熱調理を導入するよう奨励し、薪のための木の伐採削減を促した。
 同プロジェクトは環境面だけでなく、家族全員が調理活動に参加することで男女平等も促進した。地元の女性たちはこの手法を取り入れるうちに料理販売を思いつき、99年に「デリシアス・デル・ソル」レストランをオープンした。
 このレストランは現在では150人を収容できるまでに成長し、特に夏は多くの客が訪れる。太陽光を利用した美食を楽しめるだけではなく、同地域にはワイナリー、ピスコ蒸留所(ぶどう果汁を蒸留したローカル酒)、スパ、アウトドアスポーツ、星や惑星を観察するアストロツーリズムのツアーなど、他にも多くのアトラクションがある。
 エルキ渓谷は観光地として急速に人気を集めつつあるが、外国人よりも国内観光客が依然として多く、まだあまり知られていない隠れた名所。同地域へのアクセスは比較的簡単で、首都サンティアゴから中部コキンボ州ラ・セレナへの1時間の飛行を経て、約1時間10分の陸路移動が必要。

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