9月15日にサンパウロ市のジャパンハウスで行われた福島地酒紹介イベント「Kinsuisho sake brewery com a produtora Sra. Miyuki Saito」で講演を行った斎藤美幸さんは、福島の日本酒造メーカー「有限会社金水晶酒造店」の四代目蔵元だ。
同酒造は1895年(明治28年)創業の福島県を代表する酒蔵。斎藤さんはそこの一人娘として生まれた。両親や親戚から「後継ぎになって欲しい」と言われたことはなかったという。そのため、東京大学を卒業後、テレビ局に入社し、記者職やディレクター業に従事。夫の仕事の関係でアメリカに家族で住むなど酒業界とは無縁の生活を送っていた。
転機が訪れたのは2011年、東日本大震災により、酒蔵を閉める話が持ち上がった時だった。斎藤さんは「福島の歴史ある酒をなくしてはいけない」との思いで後継者となることを決意したという。
斎藤さんは「大震災の時は本当に皆で悩み、苦しみましたが、なんとか福島の伝統の地酒をなくしたくないと思い、家族総出で頑張りました。今ではブラジルで講演できる機会までいただけて本当にありがたいです。これからも福島の為に、酒蔵の為に頑張りたいです」と当時を振り返った。
講演の質疑応答では、参加者から「酒蔵に女性差別はあるか?」と聞かれ、「女性差別を感じたことはありません。でも、私が若いころは家族から『後継ぎになって欲しい』という想いを感じたことはなかったのに、今一緒に酒蔵で働く長男には、家族や酒蔵の社員が日本酒について教えたりしていて、後継ぎになることを期待していることが伝わってきます。これはある意味で一番身近な家族に女性差別をされていたということかもしれませんね」と冗談めかして話し、会場を盛り上げた。
福島から世界へ活躍の場を広げる斎藤さん。日本酒の次世代を担う存在として更なる活躍を期待したい。(淀)