UTスリーエム株式会社の代表取締役・筑井信行さん(54歳、群馬県出身)、事業開発部門執行役員の相澤祐治さん(53歳、新潟県)、取締役の横山真司さん(51歳、大分県)が9月19日から30日まで視察調査およびネットワーク強化のためにブラジル訪問し、29日に編集部を訪れた。
筑井さんは、「様々な海外情勢の変化もあって、製造業の国内回帰を模索する動きがある。そうなると莫大な人数が必要になる。だが日本人労働者は不足しており、技能実習生などは働ける業種が限られている。そこで日本人同様に自由に仕事を選べる日系人を、日本人のような待遇で受入れることで定住化してもらう手伝いをし、3~5年後には日系人10万人を抱えるプラットホームを作りたい」との構想を熱く語った。
今回はサンパウロ市に加え、北パラナのロンドリーナ、マリンガでも説明会や交流会を開催、現地実情を体感すると共にネットワーク強化を図ってきたという。
筑井さんと相澤さんは3月まで親会社のUTグループで主に日本人派遣業務を担当してきたが、4月から日系人派遣業務の子会社スリーエム担当になった。そこで日系人の故郷であるブラジル日系社会の実情を肌感覚で知り、既存のネットワークを強化するために初めて当地に足を運んだ。
親会社であるUTグループは東京都品川区に本社を置く技術(技能)者派遣・アウトソーシング事業などを統括する大手企業で、総従業員数は3万2千人以上。東証プライム上場企業だ。日系労働者約2千人を抱えるスリーエムを2年前に買収した。
愛知県で日系人サポート業務をする横山さんは「スリーエムは生活サポートナンバー1で知られている。病院、引っ越し、空港、学校の三者面談、出産の立ち会いまで手伝う」と説明する。
筑井さんは「我が社では日系人が課長や部長として現場を切り盛りしてくれている。日本語力が向上したらその分、給与を上げるシステムも考えている。日系人の中には日本で家や車を買って、休日には家族で沖縄旅行する人もいる。そんな人に増えてもらいたい」との意向を明らかにした。
ベトナム子会社も担当する相澤さんは、「あちらでは円安で訪日就労の魅力が薄れ、台湾やオーストラリアなど別の国に行きたがる動きが出てきた。今回ブラジルにきて実情にふれ、期待値が高まると同時に課題もあることが分かった。国内回帰を希望するクライアント企業に、現地の感覚をしっかり伝えていきたい」との手応えを感じていたようだった。