日本からの報道によれば、日本の出入国在留管理庁は4世ビザの入国要件緩和、「定住者」資格の取得を可能にするなどの制度改正を行う方針を固めたという。日系4世の入国を促し、長期滞在しやすい環境を整備、定住を促す狙いがあるとされている。ブラジル日系5団体も昨年に続いて要望書を、この9月に日本政府に提出し、4世ビザの要件緩和を訴えていた。その要望に比べて、今回の制度改正ではまだ物足りない部分があると言えそうだ。今後予定されるパブリックコメントの募集では、もう一段の緩和を求める要望が書き込まれそうだ。
4世ビザは2018年に導入され、日本政府は年間4千人の受け入れを見込んでいたが、22年末時点で在留者は伯人を中心にわずか128人にとどまっている。
現行制度の条件では、入国時の対象年齢を18~30歳に限定、滞在期間は最長5年間で、家族は原則帯同不可。4世の入国や生活を支援する「受け入れサポーター」が必要とされる。
制度改正案では、日本語能力試験2級(N2)相当の日本語力などの要件を満たせば、5年の滞在期間後に「定住者」へ在留資格を変更できるようにする。入管庁は年内にもパブリックコメントを募り、告示改正を目指す方向で調整を進めると報じられている。
「定住者」資格になれば無制限の滞在が可能となり、配偶者や子どもの帯同が許される。加えて、入国時の対象年齢の幅も広げる方針で、3級(N3)相当の日本語力があれば35歳までの入国を可能とするようだ。さらに、受け入れサポーター1人が担当できる人数をこれまでの2人から3人に増やし、日本国内で3年間暮らした時点でサポーターの支援を不要とする内容も盛り込まれているという。
一方、ブラジル日系5団体(ブラジル日本文化福祉協会、ブラジル日本都道府県人会連合会、サンパウロ日伯援護協会、日伯文化連盟、国外就労者情報援護センター)は9月、4世ビザの制度見直しを求める連名の要望書を日本政府に提出した。
5団体は、現状では家族帯同が5年間も認められないのは人権上問題があるとの見方を示し、入国から2~3年後に家族帯同が認められる「定住者」資格に変更できるように要望。その他、入国時の年齢制限の撤廃もしくは年齢上限の大幅な引きあげを求めている。
5団体のこの要望に比べると、入管庁の改正案はまだまだ現状維持の方向にあることが伺える。
これに対し、聖市にある国外就労者情報援護センター(CIATE)の二宮正人理事長(長野県出身、75歳)は、「4世ビザ要件の緩和は伯国日系社会にとって最重要案件の一つであり、ブラジル訪問する多くの日本の政治家の言を借りれば、ブラジル日系人が日本の外交にとって、宝ともいうべく重要な存在であるならば、可能な限り4世ビザを緩和することによって、多くの4世、そして将来は5世、6世に至るまで、就労による訪日の機会を作ることは重要な課題ではないかと思います」とコメントした。
武蔵⼤学のアンジェロ・イシ教授(3世、56歳)も「条件の見直しが行われ、少しでも緩和されることは評価したいが、この原案だと私が最も問題視してきた点については進歩が見られず、残念だ。いちばん問題だと思うのは受け入れサポーターがいないとビザ申請ができないという点と、家族が帯同できないという点なので、この両方については完全撤廃が理想だが、おそらく日系5団体はそれを要望したところで応じてもらえないことを察し、戦略的に控えめの緩和案を出してきたのでしょう」と述べた。