サンパウロ州モジ・ダス・クルゼス市コクエラ区在住の陶芸家中谷哲昇(あきのり)さんが9月28日に亡くなった。満80歳。葬式は行わないという。
中谷さんは遺書に「命をいただいた者にとってそれはなんと永続的なのか。中谷哲昇がこの世から姿を消す日が来ました。生前はお世話になりました。永遠にさようなら。中谷哲昇」と綴った。
1943年、大阪府大阪市で生まれ育った中谷さんは京都学芸大学(現教育大学)美術科を卒業後、陶芸家の叶光夫に心酔して2年間師事した後、JICA青年海外協力隊員としてエルサルバドルで陶芸を指導した。その後、中南米を周遊し、1974年にブラジル定住。国立工業学校にて陶芸を指導。メアリー・ノリコさんと結婚し、3人の子どもを授かった。
中谷さんの作品は、サンパウロ美術館(MASP)、リオ市、大阪、京都、東京等に展示されてきた。1980年にはヨーロッパ陶芸の中心地の一つイタリアのファエンサで開催されている国際陶芸展に出品して「大統領章」に輝いた。
1989年には、サンパウロ美術評論家協会から最優秀陶芸賞を受賞。2019年に作品集『AKINORI NAKATANI sua obra e sua vida』(ポ語、Enock Sacramento, Giovana Delagracia)を出版。
中谷さんは1996年からコクエラにある旧製茶工場カザロン・ド・シャの復元・保存活動に孤軍奮闘して実現した。修復事業自体が彼の芸術作品の一つと言われる。