過激派組織ハマスによるイスラエル攻撃により1500人以上が死亡して国際的関心が高まったことを、ブラジル政界では左派と右派の対立に転嫁して激化させよとする動きがある。政治家が中東紛争に異なる見解を持っていることが、国内政治に反映された形だ。10日付BBCブラジル(1)()が報じている。
ブラジルの右派政治家は、ハマスとPTのような左派を関連付けようとする。特に昨年の大統領選でのルーラ当選をハマス幹部が祝福した事実を引用し、右派陣営はPTをハマス支持として印象付けようとしている。
だからボルソナロ元大統領は「イスラエルの人々への尊重と敬意から、22年にルーラに当選祝辞を送ったテロリストのハマスによる攻撃を非難する」とSNS上で言及した(写真)。
左派の政治家やインフルエンサーも自らハマス支持を示唆する発言を行い、パレスチナの占拠と国際的な無力さが新たな暴力の背景となっていると主張している。例えばパウロ・ピメンタ社会通信局長官は「パレスチナ領土の長期にわたる占領と、国連決議を執行する国際フォーラムの無力さが、決して容認されることのなかった暴力と収奪のプロセスにおけるこの新たな章を理解する背景となっている」と述べた。
ブラジルの専門家らは近年、一般的にブラジル左派とパレスチナの大義、ブラジル右派とユダヤ・イスラエルの大義の間に関連性があると主張するが、ここには国際的に2極化する大きな政治潮流も一部反映されている。
ブラジルでは元々、右派とユダヤは親密な間柄ではなかった。右翼の軍事政権時代に、ユダヤ人で反体制派ジャーナリストのヴラジミル・エルゾキさんが暗殺されたことがそれを象徴する。
一方、英米を背景に軍事力を駆使するイスラエルに、左派は批判的な態度を取ってきた。左派はこの状況を抑圧者(イスラエル)と被抑圧者(パレスチナ人)の対立と見なし、パレスチナの権利を支持する立場を取った。
1967年の第3次中東戦争以降、この傾向は特に顕著になった。この戦争によりイスラエルは領土を拡大し、パレスチナ人の地位が不安定になり、多くの人々が難民となった。
その後、右派はイスラエルと強力な結びつきを築いた。これは主に右派に福音派が多いことの影響だとされる。福音派は聖書の解釈に基づいてイスラエルを絶対的に支援し、イエスの再臨に備えるべきだと考え、この信念に基づいてイスラエルと連携しようとする。つまり、右派とイスラエルとの関係強化は、選挙において福音派有権者の支持を獲得するための手段として用いられる傾向がある。
このような背景により、ガザ危機発生以降、福音派からは「ハマス=サタン=左翼」を関連づけるSNS投稿が多く出ていると9日付テラサイト(2)が報じている。ブラジル国内では左派と右派の間で、イスラエルとパレスチナの問題に対する対立が複雑化して理解が難しい状況となっている。