アラブ首長国連邦のアブダビに本社を置く、政府系投資会社ムバダラ・キャピタルは、自己資金と第三者からの資金により全世界で約200億ドル(2兆9805億円)を運用しているが、このたびブラジル専用の新ファンド(BSOFⅡ)を設立した。このファンドは7億1千万ドル(約1059億円)を超える資金を調達し、ビジネス基盤が強固だが何らかの困難に直面しているブラジル企業に投資すると10日付エスタード紙サイト(1)などが報じた。
この投資戦略は、2022年初めにムバダラ・キャピタルが調達した総額3億2200万ドルのブラジル専用ファンド(BSOFⅠ)からの流れだ。
同社によるとBSOFⅡは北米、欧州、中東、アジアの大手年金基金、ファミリーオフィス、企業、プライベート・エクイティ・ファンド、資産運用会社など、多様なグローバル投資家から資金を集めた。
同社ブラジル最高投資部門の責任者であるオスカル・ファルグレン氏は、「この地域に特化した2番目のファンドの完成は、ブラジルにおける10年にわたる事業と投資の成功の実績を示すものだ」と述べた。
プレスリリースによれば、BSOFⅡは「複雑な状況を交渉するためのコミットメントと能力」によって実質的な価値を引き出す可能性のあるケースを投資対象とし、複雑な問題を解決してから資金を提供することで、ファンドの投資家に「確実なリターン」をもたらすことができるとしている。
ムバダラ・キャピタルは、同じく政府系ファンドであるムバダラ・インベストメント・カンパニーの子会社であり、同社は世界中で2800億ドルの投資を行っているという。
同社は、今年のブラジルにおける最も積極的な外国投資機関の一つとなっている。9月初旬には、スポーツジムチェーンの「ブルーフィット」を4億6400万レアルで買収し、その直前の8月にはファーストフードチェーン「バーガーキング」の持ち株を増やし、情報によればさらに株を購入する可能性があるとされている。
今年の初めには、アラブ系ファンドが米国系ファンドの「ローンスター」から購入した株式で、サトウキビエタノール大手アトボス(旧オデブレヒト)の主要支配株主となった。バイア州のマタリペ精製所を管理するアセレンの親会社であるムバダラとペトロブラスは先月、バイオリファイナリー(生物由来の原料を化学製品や燃料などに変換するプロセス)分野への共同投資に関する提携を発表した。
同アラブ系ファンドはブラジルの他の分野にも積極的に投資を行い、教育分野では昨年には、バイア州のサルバドール科学技術大学(UniFTC)とバイア統合大学(UnesulBahia)の医学部を買収するなど、教育分野にも進出している。また、サンパウロ州で約300キロメートルの道路ネットワークを管轄するインフラ整備会社ロタ・ダス・バンデイラスを約20億レアルで買収し、道路分野にも進出している。