7日に始まったハマスとの紛争を受けて、イスラエルは36万人以上の予備役軍人を招集した。この招集リストには二重国籍を持つブラジル人も含まれており、20歳から30歳までの男女約175人が13日、イスラエルのテルアビブに向けてサンパウロ州のグアルーリョス国際空港を出発した。既に戦闘に参加している現地在住のブラジル兵士が見た、戦地の悲劇的な状況を13日付テラサイトなど(1)(2)が報じている。
サンパウロ州出身でブラジル籍の実業家モティさん(32)は、2016年からイスラエル在住。ユダヤ教の祝祭を家族と一緒に過ごしていた7日朝、生活が一変した。急いでリュックに服を詰め、子供や妻に別れを告げ、戦争に参加するという人生最大の挑戦に向けて出発した。
「ハマスが拉致被害者を連れて逃走したとき、私たちはすぐに国境地帯に到着した。そこで死んだ子供たち、焼けた家屋、血の海、背中や頭を撃たれた人たち、絶望の淵に立たされた人たちを見た。蛮行の全てを目撃した」と語った。
イスラエル軍に参戦しているブラジル人の中には15年からイスラエルに住み、テルアビブの政府機関で働くアルトゥールさん(28)も。7日朝、アルトゥールさんは夜間勤務を終えて家にいたときに警報音を聞いた。「たまにサイレンが鳴るけど、普段はアイアンドーム(イスラエルの強力な対空ミサイル・シールド)が守っているから気にしなかった。しかしすぐに全ての蛮行について知った」
その日のうちにイスラエル軍の指揮官が彼に電話をかけ、戦闘に参加するように呼びかけた。招集されたアルトゥールさんは、武力紛争が始まったガザ地区に近い地域で悲劇的な光景を目撃した。
「最も衝撃的だったのは、焼け焦げた車や銃弾に倒れた車だった。ハマスは通り過ぎるすべての車に検問を行い、これらの車両に銃撃を加えた。その車に乗っていた人たちがどんな目に遭ったのか、想像するのは難しい。私たちが感じていることは怒りであり、極度の悲しみでもある」と語った。
リオ出身の大学生ダニエルさん(23)もその経験を「トラウマ」と表現する。ハマスの攻撃を知ったとき、彼はユダヤ教の祝日である「スコット」の終了を祝っていた。
「その知らせを受けたとき、みんなショックを受けた。じきに招集されることは分かっていたから家に帰ってリュックに荷物を詰め両親にキスをした」
翌朝招集がかかり、軍隊が指定したエリアに向かった。同地域はすでに爆撃の対象地域になっている。「状況はますます緊迫してきている」と彼は言う。
モティさんにとってイスラエルを守ることは、18歳のときに軍隊に入隊するためだけに移り住んだ国に敬意を表することである。「ユダヤ人である私たちはイスラエルに住むべきだとずっと信じてきた。私たちの部隊の全兵士は戦意に溢れ、準備万端で、平和を取り戻すために必要な全て備えている」と彼は言う。
7日以来、多くのイスラエル人が兵士を支援し、食糧や物資、連帯のメッセージを送る。彼らが国を守る意欲は、ブラジルでの家族との別れさえも乗り越える。「私の両親はブラジルに住んでおり、心配しているが、私たちが勝利すると信じていて、この状況は過ぎ去ると信じている」とアルトゥールさんは言う。
「過去50年間、これほど大規模な紛争を目撃したことはなかった。だから、呼び寄せられたとき、むしろ安心した。携帯電話で紛争の光景を眺めているだけでは辛いばかりで、怒りを引き起こす。私なりの役割を果たしたかった」と付け加えた。
この3人に疑念はない。戦争が続く限り、彼らはイスラエル軍で戦い続けるつもりだという。紛争に参加している二重国籍のブラジル人数についての公式データはない。