汎パウリスタ地区・聖南西地区(サンパウロ州南西地区)合同研修会が10月6~7日、ピラール・ド・スール日本語学校およびコロニア・ピニャール日本語モデル校で開催された。両地区の日本語教師、学校関係者ら約35人が参加し、日本語教育に関する知見を深め合った。
研修会には、汎パウリスタ地区(汎パ)から、マリリア日本語学校、バストス日本語学校、ツッパン日本語学校の日本語教師全9人が参加した。聖南西地区からは見学先の両校に加え、ピエダーデ日本語学校、カッポン・ボニート日本語学校、在レジストロの四つ葉学園から12人の日本語教師が参加した。
地域外のアルバレス・マッシャード日本語学校や第一アリアンサ日本語学校、ブラジル日本語センターの事務次長、研修コーディネーターも参加した。
正午に会館に集まり、聖南西文化体育連合会の教育理事原口イレーネ氏、当地日本語学校校長の阿部勇吉氏から歓迎の挨拶と研修会への期待の言葉があり、母の会が用意した昼食を取りつつ交流が図られた。
午後2時45分から午後4時45分まで授業を見学し、休み時間には生徒達に交じって一緒にドッヂボールをするJICA隊員の参加者の姿も見られた。その後1時間ほど質疑応答の時間が設けられ、授業やカリキュラム、児童生徒の増加の理由など多岐にわたる質問が寄せられた。
阿部校長(1世)は、「日本学校の目的として、言語的な習得だけでなく、文化的な習得を目指し、この幼少期の貴重な時期にしか出来ない、人間形成の場を目指している」と述べた。
母の会会長の三瓶マダレーナさん(3世)は、生徒の非日系の比率の増加の要因として「実際に通っている息子、娘の授業の態度のよき変化を感じ、口コミにて伝播されることが多くなってきたことで、非日系のブラジル人の子供の入学が増加傾向。ブラジル学校にいたときは落ち着きがなかったが、日本学校入学後には授業に対して集中力が上がり、ブラジル学校の先生より『授業態度の良い変化が見られた』との声が上がっている」と答えていた。
午後6時半から行われた両地区の懇親会には、聖南西文化体育連合会会長の古川シルビオ氏も駆けつけ、当地文協会長横飛ジェトゥリオ氏や学務理事、父兄会長も加わり、和やかかつ非常に賑やかに親睦を深めた。
翌7日は午前9時から11時までコロニア・ピニャール日本語モデル校の授業を見学。続いて前日同様、質疑応答が行われた。午後1時30分から両地区の概要や活動の説明、また汎パ地区各校、第一アリアンサ校の学校紹介があり、他校・他地区の日本語教育の現状の情報交換を行った。
引き続き、グループに分かれてのフリーディスカッションが1時間行われ、活発な意見交換・情報交換が図られた。終了の合図の時には「もう終わり!?」と惜しむ声が聞こえた。午後4時に閉会式が行われ、合同研修会は終了した。
刺激に満ちた研修に参加者から喜びの声
大阪・サンパウロ姉妹都市協会主催の第11回ポルトガル語スピーチコンテストで優勝し、大阪サンパウロ姉妹都市親善大使としてブラジル滞在中の本多加代子さん(35歳、本紙10月7日既報)も2日間、研修会に参加した。閉会式で感想を求められ「研修会では、熱く真剣に日本語教育や子供たちの教育のことを考えて話し合いを行っていた。強い志を持った多くの教員がまだまだいることに感銘を受けた。このような研修があることは、お互い刺激しあい、教員にとっても多くの知識の習得、また日々の困難を教員同士で共有ができていたため、今後もこのような研修の場が求められると思う」と、日本語教師ではない日本人の立場から見て、研修会で感じたことを伝えた。
終了後も楽しそうに談笑する姿があちこちで見られ、交流は尽きないようだった。
アルバレス・マッシャード日本語学校から参加した和田由利先生は、「今まで兼業で日本語学校の教師をしていたが、もっと日本語学校の生徒も増やしたいので今年から日本語教師に専業した。昔は、私の地域ソロカバナ線地区にもいくつか日本語学校があったが、今は私の学校だけ。これからもこのような研修をする時は、ぜひ誘ってほしい」と、より一層意欲を高めていた。
バストス日本語学校の藤田勝也先生は「汎パ地区では年に2回研修会を行っており、ブラジル日本語センター主催の研修会にも参加しているが、このように地区外に研修に行くことは初めて。新しい出会いもあり、体験した人だけが感じる一生の宝になった。汎パの教師全員が何かを感じ、何かを得られたことを確信している。合同研修をやってよかったと心から思う」と、研修会開催の成功と成果に満足した様子だった。
また、「12月に聖南西地区で行われる林間学校にバストス日本語学校の生徒を参加させよう」や、「来年はぜひ聖南西地区の先生方に汎パウリスタ地区に来て頂きたい」との声も上がっており、研修会でできた地区を超えた繋がりが今後さらなる展開をみせることが期待されている。