特別寄稿=Sindicato Rural de IBIÚNA イビウーナ農村組合を紹介=優秀な農場経営者が集まる組織

営農者が集まる『イビウーナ農村組合』ビル

 『イビウーナ農村組合』(Sindicato Rural de IBIÚNA)が、『イビウーナ農村労働者組合』(Sindicato dos Trabalhadores e Empregados Rurais de Ibiúna)と混同されている。前者は農業経営者の組織、いわゆる「営農者組合」であり、後者は農業に従事する被雇用者、いわゆる「農業労働者組合」だ。活動内容は真逆で、営農者組合は組合員である営農者同士が相談してサンパウロ州イビウーナ市内(郊外)で働く農業労働者の給与額を決め、農業労働者の農業教育に努める。一方、農村労働組合は賃上げをはじめ、労働環境、待遇改善をイビウーナ農村組合に要求する。8月30日、イビウーナ農村組合ビル内の理事長室で、立花マウリシオ理事長に聞いた。

『イビウーナ農村組合』の立花マウリシオ理事長

 Sindicato Rural(農村組合)は、イビウーナの場合は『イビウーナ農村組合』(Sindicato Rural de IBIÚNA)と呼ばれ、それぞれその都市の名前が付けられる。営農者組合は各都市に1組合しかつくれない。営農者組合(農村組合)がない都市の営農者は、ほかの都市の農村組合の組合員になる場合もある。すべての都市に農村組合が存在するわけではない。
 『イビウーナ農村組合』の場合は、野菜生産者が多く、『イビウーナ農村組合』は野菜生産者の所得税をゼロにするようにサンパウロ州知事と交渉している。またルーラ大統領の陣営にいるわけではなく、政治的には無色で中立の立場を取っている。
 最近日本から来た人から「Sindicato Rural(農村組合)は労働組合なのですか」と問われ、立花理事長は不快感を表明している。日本語のシンジケート、組合という語感から短絡的に「労働組合」を連想してしまったようだ。
 一方、農村労働組合はSindicato dos Trabalhadores e Empregados Rurais(農村労働者・従業員組合)と呼ばれ、イビウーナ市の場合は『イビウーナ農村労働者組合(Sindicato dos Trabalhadores e Empregados Rurais de Ibiúna)』となっている。『農村労働者組合』も『農村組合』同様に一つ町に1組合しか組織できない。

【歴史と現状】

 サンパウロ州内にある645都市に営農者の農村組合は237組合あり、日系の農村組合理事長は15人いると言う。なかでも『イビウーナ農村組合』は1968年に創立され、現在、分担金を支払っている組合員は350人。組合活動をしている組合員は140人程度である。
 約20年前から組合員が分担金を積み立ててビル建設費をつくり、3年前に『イビウーナ農村組合』ビルを新築、完工した。

屋上に44枚のソーラーパネル(太陽光パネル)が張られている『イビウーナ農村組合』ビル

【会計士と弁護士】

 『イビウーナ農村組合』には会計士がおり、会員の会計事務を処理しており、会計事務事業は黒字を出している。安く請け負っているため、市中会計事務所から文句が出るほどだという。また弁護士が一人、週に2日、組合員の相談に乗っている。

会員に会計事務サービスを提供する『イビウーナ農村組合』の会計事務室

【農業教室の開校】

 国立農村学習サービス(SENAR=Serviço Nacional de Aprendizagem Rural)の教育政策に沿って、農業教育をしている。『イビウーナ農村組合』の教室には50席の椅子があり、最大70人の生徒を収容することができる。
 授業コースは短期間で、ソーセージ(腸詰ちょうづめ)、ハムの作り方などを15人対象に教える。ほかに牛の飼い方、牛乳の搾り方なども教える。電気工事、石工(いしく)の技術を教えるコースもある。
 教室の横に食堂があり、『イビウーナ農村組合』は授業があるときには生徒に無料で食事を提供する。有機農法の授業のときには、6カ月間、『イビウーナ農村組合』が土地を貸して、農薬・無機肥料を使用しない有機栽培の技術を教える。組合員の営農者が授業を受けることもある。
【ビル付帯設備】
 『イビウーナ農村組合』ビルの付帯設備は太陽電池と雨水貯水タンクがある。電気は太陽電池で電力を起こし、残った電力は売っている。太陽光パネル数は44枚。水は、飲み水以外は雨水を利用し、1万リットルのタンクに貯水して使っている。そのため、ビルの運営費は非常に安価である。

【付帯設備が市発展に与える影響】

市価よりも安い商品を販売する『スーペルメルカード・イビウーナ』

 太陽光パネルを設置することにより、ビル運営費が安価になるため、『スーペルメルカード・イビウーナ』は太陽光パネルを1400枚設置して50万キロワットの電力を発電し、電気、冷蔵庫などすべての電気エネルギーを賄って、商品価格を安くして利益を上げている。同スーパーはルシアノ・B・ロリン・フレイタス(Luciano B. Rolin Freitas)氏、その兄弟、いとこたちフレイタス一族で経営、営業している。ルシアノ氏は「将来は、顧客の家に商品を届けるための電気自動車を買い、自動車のバッテリー蓄電を太陽電池から取る計画です」と希望に胸をふくらませていた。

左から本紙外交員の田中ウラジミール、『スーペルメルカード・イビウーナ』のルシアノ・B・ロリン・フレイタス氏、『イビウーナ農村組合』の立花マウリシオ理事長

 『スーペルメルカード・イビウーナ』は国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)に沿って持続可能でより良い世界を目指す開発と営業を実現しようとしている。
 イビウーナで太陽光パネルを使用して成果を上げている例として、葉野菜を栽培しているジョージ・ワタナベ、野菜卸業者のタケオ・ナカチの2氏が挙げられる。(取材/大浦玄)

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